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第52話 黄金コンビ、最後の事件

ガシャァアン


 僕とハッタリはツリー点灯式の様子を遠巻きに眺めていた。点灯式の事故は歴史の通りにマエダさんによって……正確に言うとマエダさんとゾンビさんの両名によって無事怪我人を発生させることなく進行したようだった。


 え、なんでゾンビさんも前に出てきたんだろう。ゾンビさんも点灯式事件に関わってたなんて話なかったよな? これが原因で歴史が少し変わったりしないよね? 大丈夫だよね?


「事件解決っちゅーわけか……」


 突然のゾンビさんの介入に驚いている僕の横でハッタリが呟く。その声色に違和感を覚えた僕はすかさず返事をする。


「なんだハッタリ。事件解決したんだから喜べよ」


「……そうやなぁ」


 なんだこいつ。事件解決したんだぞ?! てっきり「ワテは迷宮なしの名探偵や! ワテに解決できひん事件はないんやぁ!」と大見得を切ると思っていたのに。何をしんみりとしているんだ。


「お前の気持ちがよくわかったわ」


「俺の気持ち……?」


「あぁ、この事件を解決するっちゅーことは、大事な相棒を失うっちゅーことなんやから」


 ハッタリの言葉にハッとする。そうだ。今この歴史改変事件が解決したということは、つまり僕がハッタリの相棒になるという未来がなくなったということなのだ。僕はハッタリに『大事な相棒』と呼ばれたことにくすぐったさを感じていた。


——これが正しいことだったんだろうか


 僕はビッグボスを取り戻すために、そしてあかねちゃんとの関係を取り戻す為に歴史を修正した。だけど、その代わりにハッタリもメガネさん達も様々なものを失ったのだ。いや、元々はこっちが正解なんだけど……。いや、こっちの世界の人にとっては……。あぁ、訳がわからなくなってきた!


「ハッタリ、これで良かったんだよな?」


「は? そりゃそうやろ。タイムスリップ事件を解決した探偵なんてオレが世界初や。きっと師匠も成し遂げてへんパーク探偵史上初の快挙やろうな」


 初の快挙って、お前と師匠以外にパーク探偵なんていうおもしろ職業のやつがいるのか疑問ではあるが、そこは喜んでいるようで良かった。


「なぁ、お前の世界でもオレはちゃんとパーク探偵やってるんよな?」


「あぁ、うざったいくらいにな」


「ただお前は相棒じゃないんやな」


「そうだけど……」


「じゃあ、これが俺たち黄金コンビの最後の事件やったっちゅーわけや」


「黄金コンビ??」


「そうやそうや、お前は知らんのか……」


 ハッタリは切なそうな顔をして、キセルを取り出して吸うそぶりをみせる。煙も何も出てないところをみると、葉っぱも何も入ってないようだ。


——黄金コンビか……


 そう自分で言うほどの相棒を失う気持ちはどんなものなのだろう。僕があかねちゃんから忘れ去られた絶望ほどではないと思うが、やはりかなりの喪失感だろう。元の世界に戻った時、ハッタリがこのことを覚えているのかどうか次第でもあるけど。


「まぁ、あっちに帰っても黄金コンビって程じゃないけど。なんか困ったことがあったら頼りにするようにするよ」


 本心から出た言葉だった。僕にはよく気持ちがわかる。大切な人を失う気持ちが。一ヶ月前の僕が聞くと驚くだろう。あんなにあかねちゃんを巡るライバルだと思っていた男に対する言葉だとは思えない。今回のこのツリー点灯式事件を経て、相棒のような信頼感を多少なりとも得ていたのは事実だった。


「おう。変わってなければ、いつもの場所で待ってるで」


「いつもの場所?」


「バックヤードのゴミ収集場の裏。そこがオレの秘密の探偵事務所や。なんか困ったら来てみい。そっちのオレが何でも解決してくれるはずや」


 「オレはどの世界でも天才パーク探偵やからな」と言ってハッタリは笑った。確かにそうなのかもしれないと思った。なんて言ったってお前は世界初のタイムスリップ事件を解決した探偵様だもんな。


「さよなら相棒、楽しかったで。そっちのオレによろしくな」


 ハッタリはそう言うとスタスタとどこかに歩いて行った。その姿を見つめながら、僕は視界が歪み始めるのに気づいた。


——あ、そろそろ戻るみたいだ


 こうして長く長く感じた歴史改変のためのタイムトラベルが終了しようとしていた。いつもと同じ時間のはずなのに、今回は長く感じたなぁ。もうタイムスリップや歴史改変なんてコリゴリだ。あんな絵があるせいでとんでもなく苦労してしまった。

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