第50話 シャクレとメガネ
俺は先ほどまでメガネがいた場所を見つめていた。そして、少しシャクレた自分の顎を触りながら、メガネと出会った日のことを思い出していた。
『俺、そんなにシャクレてるかな……』
シャクレた顎をコンプレックスに感じていた俺は、学生の頃顎をいじってきたやつと喧嘩をする日々だった。喧嘩すればするほど喧嘩を呼ぶ。喧嘩をしまくって、周囲から浮いた俺に話しかけてきた奴がいた。それがメガネだった。似合わないサングラスをかけている見るからに変な奴だった。
『お前、シャクレって言われるのが嫌なのか?』
『あぁん? 何だお前?』
『俺はお前のシャクレた顎かっこいいと思うぞ?』
『そ、そうか……?』
『あぁ、俺は好きだね。B'zみたいでかっこいいよ!』
『え? 本当に? B'zみたい?』
——さっき言いそびれちゃったな……
俺は顎を触りながら考えていた。さっき話している時にメガネに言えばよかった。俺たち2人で“愛の爆弾”ってグループをやろうよって。
そう思った俺はメガネにメッセージを送るのだった。あいつ俺の目の前から消えたけど、大丈夫だよな? 死んでないよな?
◆◆◆
『メガネ、さっきは突然俺の目の前から消えてあれはどういうマジックなんだ? 大丈夫だよな、生きてるよな?』
家で休んでいた俺の元に突然シャクレからメッセージが来た。親友からの久しぶりのメッセージに驚いた。テーマパークでダンサーをやっていると聞いたけど、元気でやっているのだろうか。メッセージの内容は全く意味がわからないけれど、そういうところもあいつらしいな。
カチャ
俺は眼鏡を外して、机の上に置く。度なんか入ってないから、家では別に外しておいてもいいのだろうが、癖でかけたままにしてしまう。その眼鏡を見ながら、ふと昔のことを思い出していた。
『これ、お前つけろよ』
『え? なんだこれ、眼鏡?』
『ずっと思ってたんだけど、お前そのサングラス全然似合ってないぞ。お前の顔だとこういう眼鏡の方が似合ってると思うんだ』
『ま、まじか。サングラスかっこいいと思ってたのに……』
『それに俺がシャクレでお前がメガネ、なんか特徴あっていいだろ』
『そんなもんか。わかった!』
——ははっ、何だよそれ
思い出しながら笑ってしまう。当時ツッパリに憧れてかけていたサングラスだけど、確かに似合ってなかった。シャクレにもらった眼鏡をかけた瞬間しっくり来たのを覚えている。まるで体の一部かのような……。
カチャ
俺は机の上に置いた眼鏡をかけ直す。今では眼鏡をかけてないとソワソワする程だ。シャクレ、俺も久しぶりに会いたいな。また2人でカラオケでも行けたらいいな。いつかみたいにB'zをずっと歌おう。俺はケータイの画面を見つめながら、シャクレからきた訳の分からないメッセージの返信に頭を悩ませるのだった。




