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第45話 悪役、暴れだす-3

「わかった。じゃあ、ツリー点灯式が始まったら『危ない!』みたいな事言って飛び出せばいいんだな?」


「そうですね。そ、それで完璧です。それを俺が遠くから撮影しておくので……!」


「そんな動画が大事なんだな……よくわからないけど」


「はい! ば、バズります、絶対に!」


「バズ……? なにそれ?」


「あ、バズるってのは流行る的な意味です」


「ふーん。いいね、良い言葉だ。バズる……バズるか……」


——良い言葉かな?


 シャクレさんはバズるという言葉を気に入ったのかしきりにバズるバズると呟いていた。


「あのさ……一つ聞いてもいい?」


「は、はい。何でしょう?」


「その……。未来では俺とメガネはずっと仲良いの?」


「そうですね! 仲良しです!」


「そうか……それは嬉しいな」


「嬉しい……ですか?」


 シャクレさんは空を見上げながら、照れくさそうに笑った。


「あいつとはさ……長い付き合いなんだ」


「……」


「そうか、君は未来から来たなら知ってるかもしれないけどさ。最近あいつと会えてなくて。大人になったらさ、友達とずっと一緒にいるなんて出来ないじゃん?」


「そ、そうですね」


「でも君の言うインダストリアルセンサーだったら……」


「インフルエンサーですか?」


「そうそう、インフルエンサーだったらメガネと一緒に居られるんだよね」


「そうです!」


「10年後もメガネとふざけ合えてたら最高だなぁ」


 シャクレさんとメガネさんが長い付き合いというのは知っているけど、その詳細は知らない。けれど、“愛の爆弾”の活動で2人の歴史を少し垣間見ることは出来ていた。2人の間には俺も立ち入れない絆のようなものがあるのだ。


「幸せなんだよね?」


「え……?」


「俺がツリーのやつをすることで、メガネも喜ぶんだよね、きっと」


「そうです!」


「そうか、なら……やらない理由がないよね」


 シャクレさんはニコニコとして、楽しそうだった。俺の方を見ながら、体を揺らしながらぼそりと呟く。


「愛の爆弾がいいな」


「え?」


「グループ名、B'zの。知らない?」


「知ってますよ。曲名ですよね、“愛のバクダン”」


「そうそう。メガネとカラオケ行ったら絶対歌ってたんだよね。だから、グループ名は“愛の爆弾”がいい」


「いいですね……!」


「あれ、もしかして知ってた? そうか、未来でもその名前だったか?」


「はい、そうです!」


「あはは、俺って単純〜!」


 俺は元々知る由のなかった“愛の爆弾”の命名の瞬間に立ち会えたことに感動していた。元の世界ではすでにシャクレさんとメガネさんは“愛の爆弾”として活動していたからだ。あぁ、時代が違えど今目の前にいる人はシャクレさんなんだなと思った。


「じゃあ、俺はもう少しやることがあるので失礼します。点灯式で会いましょう!」


「おう、ありがとう。また後で! その時は俺はヒーローだな!」


「はい、そうですね!」


 俺は手を振ってシャクレさんと別れた。さて、まだ俺の仕事は終わっていない。もう一仕事だ。まだこれだけではインフルエンサーとして絶対成功とは言えない。後もう一つの鍵、それはこの時代の俺に会うことだ。


——この時代の俺がいそうな場所は……


 はっきりとわかる。シャクレさんと話すのとは訳が違う。次に話すのは自分自身。過去の自分だ。何を考え、何を信じるか、その全てが手に取るようにわかる。さぁ、成功者まで後少しだ。

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