第43話 悪役、暴れだす-1
——ここは昔のパークだ!
スタッフの男を追いかけて絵の中に飛び込んだリュウは驚いていた。過去に行くとか話していたあいつらの話は本当だったのだ。見覚えのある景色、懐かしい景色。ここは俺が昔通い始めた当初のパークだ。
初めのうちは懐かしいなと思っていただけだったが、少ししてこれはチャンスかもしれないと考え始めていた。この過去のパークに来ている自分に声をかけて、今からインフルエンサーとしての活動をするように言えば、未来が変わって人気者になるのではないか。
——あっ!
俺は荷物を弄る。荷物の中からUSBメモリが出てくる。そう、“インフルエンサー絶対成功メソッド”。これをこの時代の“俺”に渡せば……。
——いや、それだけじゃだめか……
確かに昔から始めていれば始めている程インフルエンサーが有利なのは間違いない。しかし、この時代の俺は特に特技がある訳でもないし、特別弁が立つわけでも、華があるわけでもない。
——うーん
あー宝くじの結果でもメモして持ってきていればなぁ。もしくはスポーツくじ。競馬や競輪の記録。そしたらギャンブルで大儲けできたのに。いや、一旦未来に帰って……。
——ん?!
どうにか金持ちに、成功者になる方法はないかと考えている俺の眼前に巨大なクリスマスツリーが見えてきた。ツリーの前ではスタッフ達が何やら準備をしている。
——ここは……10年前のツリー点灯式の日だ!!
俺は確信を持ってそう思っていた。ツリーの装飾は年によって異なる。何より、この10年前のツリーは何度も見た記憶があった。ツリー点灯式事件の動画をよく見返していたからだ。と言うことは、この日過去の俺はパークに来ている。そして、シャクレさんもいると言うことだ。
——これはいけるかもしれない……
今日の俺は冴えている。匂う。匂いが漂ってきやがる。成功へと続く道の匂い。俺が金持ちの成功者になるための道が。そう考えていると、俺の目の前にちょうどシャクレさんが現れた。10年前のシャクレさんだ。
「あの、シャクレさん!」
「え? どうして俺の名前を……」
俺は勢いに任せてシャクレさんに話しかける。そうだ、この時はまだ知り合いじゃないんだ。
「あ、俺よくショー見ててそれで……」
「あー確かにいた気がする! いつも応援ありがとうね、ちょっと今から点灯式で忙しいんだ。失礼さ……」
「ちょ……ちょっと待ってください!!」
「な、何だよ」
足早に去ろうとするシャクレさんを何とか引き留める。当然か。俺は突然話しかけてきたやばいファンのように見えるのかもしれない。
「実は今日のツリー点灯式のことで、伝えなきゃいけないことが」
「伝えなきゃいけないこと?」
シャクレさんが首を傾げる。俺は言葉を選びながら、話を続けた。
「実はあのツリーの飾りが落下してしまうんです」
「え、本当に?! 大変だ、急いでスタッフに知らせないと……」
「ま、待ってください!! 落ち着いて!」
「落ち着いていられるかよ。飾りが落ちたら危ないだろう」
「そうなんですけど……。今はまだ大丈夫です」
スタッフの元へ駆けて行こうとするシャクレさんを引き留めて、俺は話を続ける。端的に、シャクレさんに言葉を伝える。
「シャクレさん、俺は貴方をヒーローにするために来ました」




