第41話 10年前へ-2
「ハッタリが訳わからないこと言うせいでリュウを見失っただろうが!」
「やーかーら! タイムパラドックスが起こるゆーたやろうが!」
「タイムパラドックスの前にリュウを捕まえることが優先だろ!」
「自分同士が接触するのは危険やねん! これはタイムスリップ物の定番で……」
「定番って……。お前はタイムスリップ初心者だろ! フィクションの話を持ち込むんじゃないよ!」
「なぁにぃ! じゃあ、お前はなんか知っとるんか! アホ! 歴史変えてしまったくせに!」
「好きで歴史変えたわけじゃないわ!!」
「2人とも落ち着けって……」
メガネさんが口論する僕たちを仲裁する。僕たちは完全にリュウを見失ってしまっていた。ハッタリがタイムパラドックスだとか訳のわからないことを言わなかったら、今頃捕まえて話を聞けていたのに。くそう。
「まぁ、メガネさんの言うとおり。タテノと揉めとる場合やない。オレに心当たりがあるんや。ついてこい」
「心当たりってなんだよ」
「それはズバリ……デイちゃんや!」
◆◆◆
「急にゾロゾロと何よ。誰?」
「実は聞きたいことがあんねんけど」
僕たちはハッタリに連れられて、カフェのテラス席へとやってきていた。そこにはいつもと変わらぬ様子のデイちゃんが、これまたいつものようにコーヒーをカップで嗜んでいた。怪しい男3人組の僕らを見て、怪訝そうな顔をしていた彼女は僕の顔を見るとハッとした表情になった。
「あれ、あなたこの前の22周年シールのスタッフじゃ……」
「あ、そうです。あの時はすいません……」
やっぱり覚えていた。10年後も覚えているのだから、それほど日の経っていない今なら覚えているのも当たり前だ。
「なんや、知り合いかいな。なら、話が早いな」
「あなたは誰? この探偵みたいな格好した人は知り合いなの?」
デイちゃんがハッタリのことを怪しい男を見る目つきで睨む。デイちゃん、当たってます。こいつは探偵みたいな格好をした変な怪しいやつなんです。
「オレはハッタリゆうパーク探偵です。師匠がお世話になってます」
「え?! パーク探偵さんのお弟子さん?!」
「はい、そうです。今日は聞きたいことが……」
「おい、ちょっと待て待て待て」
「なんや……。時間がないねん」
聞き捨てならない言葉を聞いた僕は、ハッタリに詰め寄る。それを無視して、当たり前みたいに話を進めようとするハッタリ。いや、ちゃんと説明してくれよ。そう思った僕はハッタリをデイちゃんから引き剥がして、ヒソヒソ声で質問するのだった。
「え、ハッタリの前にもパーク探偵っていたの??」
「はぁ……。当たり前やろ。オレが1人で突然パーク探偵を名乗り始めた変な奴だとでも思うてたんか? 元々師匠がおったねん。10年前ゆーたら、師匠がバリバリやった頃や。デイちゃんの話も師匠からの教えやねん」
「……。そういうことは早く言ってくれ」
「こっちの歴史では言ってたんやけどな。お前は知らんかったんか」
「あのー、さっきからなんの話を?」
ヒソヒソと話す僕たちを不思議に思ったのか、デイちゃんが話しかけてくる。ハッタリはデイちゃんの方に向き直って、あっけらかんと答えるのだった。
「いや、悪い悪い! こいつ最近相棒になったばかりやさかい、探偵ちゅーもんを教えてたんや」
「そうなんですか……。聞きたいことってなんですか?」
「いや、実は人を探しててな。リュウって言うんやけど、見てないか?」
「あぁ、リュウくんならさっき見たわよ。多分ベイサイドエリアの方に向かったんじゃないかしら」
「流石デイちゃんや! さんきゅーな!」
「よし、ハッタリ早速行こう!」
「お前に言われんでも行くっちゅーねん」
なんでも知ってるデイちゃんの情報を元にリュウの元へと向かおうとする僕ら。すると、ずっと黙っていたメガネさんが話し始めた。
「あ、あの……」
「何?」
「ちなみにシャクレはどこにいますか?」
「あぁ、シャクレくんならこれからツリー点灯式に出るって言ってたから……。多分ツリーの近くにいるんじゃ……」
「……! 本当ですか! ありがとう!」
メガネさんはその情報を聞くと何かを決意したように僕たちの方に向き直る。
「俺……先にシャクレの方に行っていいかな? こっちのことが終わったらすぐ合流するから……。リュウのことは任せていいか?」
「シャクレの方って、メガネさん何を……」
「さっきの話聞いてて思ったんだけど、要はシャクレを点灯式に参加させなければいいんだろ? そうしたら、マエダさんがツリー点灯式事件を解決することになる」
——確かに……
リュウの方を見張ることも重要だけど、そもそもツリー点灯式にシャクレが参加しなければ、自動的にマエダさんがツリー点灯式事件を解決することになるかもしれない。なるほど、そういう解決の方法もあるのか。
「なるほどな……。じゃあ、メガネさんはシャクレの方をよろしく頼む! もしかしたらそっちにリュウが現れるかもしれん。その時はコレで連絡してくれ」
ハッタリはそう言うと、缶バッチをメガネさんに手渡した。
「これは何?」
「これは探偵缶バッチや。裏のボタンを押すと、パーク内やったら会話が通じるんや。トランシーバーみたいなもんやな」
「え、すごいな。そんな秘密道具が……」
「伊達にパーク探偵を名乗っとらんのや。じゃあ、よろしく頼むで!」
探偵缶バッチだと……?! なんだそのびっくり道具は。パーク探偵なんて言う訳のわからない職業に加えて、秘密道具まで持っているのか? 益々どういう存在なんだ、パーク探偵って。探偵缶バッチを作ったのか? 自分で?
「ちなみに探偵缶バッチは先代パーク探偵の師匠が作ったんや」
「情報量が多すぎて訳わかんねぇよ……」
「じゃ、じゃあ俺はツリーの方に行くから。もしこっちにリュウが現れたり、何かあったらコレで連絡するから!」
メガネさんはそう言い残して去っていった。僕らには少しだけ緊張感が漂っていた。さぁ、いよいよだ。いよいよ問題の中心のリュウに接触するんだ。元の歴史にするための大詰めの予感がする。ゲームだったらラスボス前のセーブポイントだ。ここを過ぎるとセーブできないからした方がいいよとお助けキャラが教えてくれるポイントな気がする。




