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第39話 僕らタイムダイバーズ

「この絵から本当に?」


 僕たち3人は休憩スペースの絵の前にやってきていた。ハッタリは不思議そうに絵をじーっと眺めている。


「見たところ、何の変哲もないけどなぁ」


「よし、じゃあ早速行こう!」


「ちょ、ちょっと待って!!」


 僕が早速『ダイブ』をしようとするとメガネさんが遮った。


「どうしたんですか、メガネさん」


「一旦整理しよう! タイムスリップした後はどうすれば……」


 確かに、タイムスリップした後にすることをちゃんと整理しておいた方が良い気がする。それを聞いたハッタリがすかさず探偵ぶって場を仕切り出す。


「まずはリュウを見つけて、USBメモリを奪うことやな。その後シャクレの足止めと……」


「俺、マエダさんと話したい」


「は……何を……」


 僕はハッタリに進言した。こうなった原因の一つが僕とマエダさんの中にもある気がしていた。ちゃんと話すことが必要だと。


「あーー! わかった! でも、最優先はリュウを見つけることや。そのついでにマエダさんを……」


「じゃあ、俺はシャクレを見つける」


「な……!」


「さっきの話ならシャクレを足止めすることも必要じゃないか? あと、俺も話したいことが……」


「あー、わかった! じゃあ、メガネさんはシャクレ担当! んで、オレとタテノはリュウを探しつつ、マエダさんも探す! それでええな!」


「うん、大丈夫!」


「あ、ちなみにタイムスリップって制限時間とかあるの?」


「正確にはわからないんですけど、いつもは大体1時間〜2時間くらいだったと……」


「結構短いな……」


「まぁオレにかかれば、そのくらい30分あれば十分や。なんて言ったって天才パーク探偵やからな」


 確かに、意外と短い時間しかない。1、2時間でちゃんと出来るだろうか。もし、ちゃんと出来なかったら……。いや、でも今回失敗しても、また絵からタイムスリップすればいいだけの話なのか?


「まぁ、もし失敗してもまた戻ってから再度チャレンジすれば……」


「いや、今回がラストチャンスだと考えとけ」


 軽い気持ちで話した僕の言葉を遮るように、ハッタリが話す。


「ど、どうして……」


「ただの勘やけどな。こういうタイムスリップものは、やり過ぎると宇宙が崩壊するとかがよくあるオチや。あと、早いとこ修正しないと歴史が固定されるみたいなパターンもある。この絵からタイムスリップできる回数が限られている可能性だってあるんや。緊張感持っていけよ」


 宇宙が崩壊……?! そういえば、はてなさんがタイムスリップ考察していた時に似たようなことを話していたような気もする。途端に僕は緊張してきていた。


「まぁ、考えたって仕方ない。あとはやるだけや」


 ハッタリはそう言うと僕の背中をバンッと叩いた。僕はそれに文字通り背中を押されて、『ダイブ』のモードへと入っていった。


「準備いいですか?」


「おう!」


「いつでもええで」


「じゃあ、俺が『ダイブ』って言ったら、絵の中に入るので……」


「なぁ、タテノ。そのダイブってなんや? 言わんとあかんのか?」


「いや、かっこいいかなと思って……」


「じゃあそれいらへんやろ! なんやねん、ダイブって!」


 ハッタリが変なところに突っかかってくる。別にいいだろう、タイムスリップの時にどんな掛け声を言ったって。ダイブ経験者の僕に従って欲しいものだ。


「タテノくん。俺はわかるぞ。なんか掛け声があった方がかっこいいよな」


「メガネさん……! そうですよね! わかってくれますよね!」


 メガネさんが同意してくれた。嬉しい。やっぱりハッタリはわかってないやつなんだ。メガネさんはいい人だ、元の世界に戻ったら、メガネさんは僕が応援することにしよう。


「アホか、お前ら。ガキちゃうねんから……」


「メガネさん、ハッタリのやつ何もわかってませんね」


「なぁ? 俺たちはタイムダイバーズってわけだ」


「なんやそれ、聞いた事ないわ! タイムフライヤーみたいに言いやがって!」


「タイムダイバーズ……! かっこいい!」


「ふふふ、今を持って俺たち3人はタイムダイバーズだ!!」


「……勝手にしろ」


 ハッタリが探偵ぶって呆れた顔をする。すると、メガネさんが僕たち2人に肩を組んでくる。察した僕はハッタリの肩へと手を回す。そうして僕ら3人は何を言うでもなく円陣を組んだ。


「よし、ハッタリくん! タテノくん!」


「はい!」


「なんやねん!」


「俺は! 愛の爆弾を取り戻すために!!」


 メガネさんはそう言うと右足をダンっと前に踏み出した。なるほど、一瞬で僕は理解した。彼はタイムスリップ前の決意表明をしているのだ。ならば……。


「俺は! あかねちゃんとビッグボスを取り戻すために!!」


 僕はそう叫んで、右足を前に踏み出す。次はハッタリの番なのだが……。


「急に何をやっとんねん」


「おい、冷めてるんじゃないよ!」


「そうだぞ、アホ探偵。ノリが悪いぞ……!」


「あぁ!! うっさい!! オレは……オレは迷宮知らずの名探偵ハッタリ! やから、こよタイムスリップ事件を解決するために!!」


 ハッタリが右足を踏み出す。よし、これで揃った。


「よっしゃあ! 俺たちタイム〜!!」


「ダイバーズ!!!」


「……ダイバーズ」


「おい、アホ探偵揃えろよ」


「アホはお前らや! ガキやないんやから!」


 ハッタリと口論しながら、僕はそんなことをしている場合じゃないと思っていた。大人な僕はハッタリを落ち着かせて、『ダイブ』の準備を始めた。


「2人とも準備はいいか……」


「おう」


「いつでもええって言うとるやろ」


 僕は息を吸う。これが最後のタイムスリップになりますように。次にあかねちゃんに会う時、いつものあのあかねちゃんに会えますように。その時、ビッグボスもちゃんといますように。


「行くぞ……! ダイブ……!!」

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