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その3
「いいのかな? こういう事」
「言ったでしょう? 私達は近過ぎるくらいじゃないとダメなのよ。そうじゃないと前みたいな息苦しい姉弟関係に戻ってしまうわ」
「それは……困る……」
「そうよ」
奈美は恭平の耳元に口を寄せ声をひそめて言う。
「一線を越えさえしなければ……それでいいじゃない?」
「……」
「さ、行ってらっしゃい! 遅刻したら奈美に怒られるわよ。時間に厳しい子なんだから」
真奈は恭平を通路に押し出す。
「い、行ってくる」
ドアを閉めた後、離れていく恭平の足音を聞きながら真奈は独りごちる。
「早く帰ってきてね、恭平。私も……待ってるから」




