その2
朝。
部屋の窓を開けた恭平は、晴天の空を見上げてウーンと背伸びをする。
(奈美とのデートにはうってつけの天気だ)
「恭平!」
振り返ると部屋の入口に立つ部屋着姿の真奈と目が合った。
彼女は柔らかい表情で恭平を見つめている。
例の事があってから二人の姉弟関係は一気に良くなっていた。
「今日は奈美とどこに行くの?」
「まずカヌレの美味しいカフェに行く。それからショッピングモールをブラって、最後カラオケだな」
「楽しそうだね。私は寂しくネトゲ実況でも見て過ごしますか」
「そっちは本命彼氏と上手く行ってるの?」
「ええ。あなた達に負けないくらいラブい感じよ。まあ都合よく会える人じゃないから少し寂しいけどね」
そう言いつつどこか幸せそうな真奈を見て恭平はホッとする。
「ところで恭平、あまりハッスルしちゃダメだよ」
「へっ? ハッスル?」
「行くんでしょ? 《《カラオケ》》!」
中慶学園の生徒ご用達のカラオケボックス。
そこは老夫婦の個人経営の店でチェックがゆるいとの噂があり、ホットなカップルがいちゃいちゃするのにうってつけの場所とされていた。
「いや、本当にカラオケするだけだから……」
実際はそこで「ウォーミングアップ」してから留守宅の葉月家に行って奈美と「バーサス」する予定だ。
「カヌレ買って帰るよ」
玄関で恭平がそう言うと真奈は渋い顔をした。
「私、ああいうシュガシュガしたもの苦手なんだ」
「だよね。じゃあ真奈には「仙人マーク」を買って帰るよ」
「やった、ビーフジャーキー大好き」
「じゃ、いってくる」
「待って」
ドアを開いて出て行こうとした恭平を奈美が呼び止める。
「忘れモノだよ、恭平」
顔を近づけてキスをねだる。
戸惑いの表情を浮かべつつ恭平はそれに応え、少し深めの口づけをするのだった。




