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第10章 それぞれの決着 ~その5~

 案の定、というべきか?

 精霊争覇戦本戦個人戦とチーム戦は悠斗の予想した通りの展開となった。


 個人戦の準決勝で総司は辛うじて対戦相手の藍涼一を退けたものの、決勝で相対した翠瞬に敗退。


「虹七家の次期当主と連戦では、さすがに僕でも勝てませんよ」


 とは総司の弁である。

 肩を竦める仕草でさえ、爽やかだった。


 瞬も香港四天王を撃破した実力者である。

 優勝に値する精霊使いであることは疑いない。


 まあ、異論を挟む余地はいくらでもあるが順当なところだろう。

 また旋風の貴公子様はドヤ顔で自慢してくると思うと、悠斗は気が重いが。


 これで総合優勝は残るチーム戦で決定することとなった。

 高城彰のいる第1分校チーム、そして紅悠斗を擁する第3分校チームが、それこそ順当過ぎるくらい順当に決勝で顔を合わせることとなったのである。


 勝利したチームの分校が、そのまま総合優勝となるのだ。

 最後の最後で、悠斗に大一番が巡ってきた。






「そういえば、1年生なのに本戦の方に出場しているんだな」


 まだ1年なのか。彰はやや面食らいながらも、試合前に握手を求める。

 場慣れしている悠斗は素直に彰の手を取り握手をした。


「まあ出場しているというか、させられたというか……」


 悠斗は顔がひきつっている。

 次の瞬間、どうしたことか同じチームのいる背後から寒気が感じられた。


「ダーリン、何か不満でもあるのかな?」

「そんなわけないわよね?」


 汐莉と茉夏による厳しいプレッシャーに悠斗はさらされる。

 頭が痛くなってきた。


「お互い、女で苦労するな」

「違いない……」


 彰と悠斗は互いに苦笑いを浮かべ、試合の位置につく。

 これが精霊争覇戦最後の戦いだ。

 スタジアムにいる全ての人々が固唾を飲んで見守る。


 高城彰、ナターシャ・サフィーナ・奥村杏華の第1分校チーム対、紅悠斗、壬生汐莉、蒼茉夏の第3分校チーム。

 微妙に虹七家と他の精霊使いという縮図となっていた。


「始め!」


 審判が開始の合図を出す。

 精霊使いなら印を結び始めるのが普通である。


 しかしナターシャ・サフィーナは試合開始と同時に地面を蹴った。

 茉夏に狙いを付ける。


「させるか!」


 その動きを察知した汐莉は、迅雷を発動させ行く手を塞いだ。

 2人は肉弾戦を始めるという、精霊使いにあるまじき戦い方を選択する。


「これって、ルール違反じゃ……?」


 小首を傾げながら、悠斗は審判に視線を投げかけた。


「問題無い」


 そう言って審判は首を左右に振る。


「ああ、そう」


 精霊争覇戦なのだから精霊魔法で勝負すべきではないのか?

 そんな疑問が頭をもたげるも、悠斗は決して口外したりはしない。


 汐莉の方が形勢不利と見てとった悠斗は、別の精霊魔法に切り替える。

 ナターシャ・サフィーナは生気の訓練を受けた、れっきとした軍人だ。

 刃物を所持していればともかく、徒手空拳では汐莉に勝ち目はなかった。


「がはっ……」


 ナターシャの拳が、深々と汐莉の腹にめりこんだ。

 お腹を両手で押さえたまま膝をつき、その場にうずくまった。

 最初の脱落者である。


召喚サモン! サラマンダ―(火トカゲ)!」


 2体の火トカゲを召喚し、ナターシャへ差し向け時間稼ぎをしたうえで、悠斗はさらに印を結ぶ。


 火トカゲを操りつつ精霊魔法を準備するという離れ業をやってのけているのだ。

 これは愛李の2つ同時に精霊魔法を放つという戦い方を見て思いついた。


「炎熱の渦!」


 悠斗は、試合が始まってから印を結び続けている彰に炎熱の渦を叩き込んだ。


 あの様子だと、かなり大きな精霊魔法を放つ気なのだろう。

 そうなる前に戦闘不能に追い込みたかった。


岩石の扉ロックドア!」


 すかさず杏華によるサポートが入り、彰の周囲に防御魔法が展開された。


「出力が足りなかったか」


 悠斗の眉間に縦皺が何本も刻まれる。

 ろくに練習していない技術を実戦で披露すべきではないと痛感した。


 炎熱の渦は岩石の扉を突き破ることが出来なかったのである。

 そして、ついに彰の精霊魔法が完成し、悠斗目がけて放たれた。


雷神の槌ミョルニルハンマー!!」


 稲妻が轟き、雷神の槌が顕現すると悠斗に襲いかかる。

 彰の持つ精霊魔法で最強のものだった。


流水の滝アクアンフォール!」


 悠斗を守るべく、茉夏が防御魔法を展開する。

 しかし、アナスタシア事件の中心にいたとおぼしき人物は、悠斗と茉夏が推測した以上の人物だった。


 雷神の槌は流水の滝を打ち破り、悠斗に直撃する。

 まさしく雷の神が放った一撃。


 あっさりと悠斗は気を失ってしまう。

 召喚した火トカゲも消え去り、精霊争覇戦の最終戦はこうして結末を迎えたのだ。


 それと同時に総合優勝の栄冠も、札幌の第1分校の頭上に輝いた。

 まさか、ここまで圧倒的な差がつくとは誰が予想しただろうか?


 さらに虹七家の人間が所属していないチームが優勝するのは、快挙でもある。

 誰もが健闘をたたえ合い、長かった精霊争覇戦の幕は閉じた。

 第2部エピローグは短いですので3時間後に投稿します。

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