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背を向け、更に岸壁に近づき飛び降りる仕草を見せたところで、美夜はやめて───!と叫び胴にしがみつきその場に倒れた。はずみで石や砂が勢いよくいくつか滑落し、上半身がぶらんと投げ出されたが俺も美夜もなんとか無事だった。
恐ろしさで震えながら泣く美夜。ふたり一先ず安堵のため息をつくと、涙でべしょべしょに濡れた頬を拭ってやりながら俺は言った。
「……お前といることで皆死ぬと言っていたな。じゃあ訊くが、憂介は死んだかよ」
唐突な質問に、美夜は泣き腫らした目で俺を見つめ返す。
「……死んでないわ。でも、それは咬介が助けてくれたからで……」
「俺にアイツを助けるように言って、俺を動かしたのはお前だろ」
憂介を助ける為に、体を張って俺に身を捧げ働きかけた。その行動が間違っていたとしても、美夜がいなければ憂介は今ここに居なかったかもしれないのだ。
「……で、でも、病気になったのもそもそも私の所為で、兄様だって……」
「星の力に振り回されるな。そんな運命、俺が断ち切ってやるし一緒に背負ってやる。俺はお前を置いて逝ったりしない」
泥だらけの美夜を抱きしめて、そして涙に濡れた頬を口付けてやりながら言う。
「だからこの墓前に誓え。二度と俺の側を離れるな。俺と共に生きろ」
ふわりと百合の花の香りが風に乗り届いた。俺をここまで連れてきてくれた、母と同じ名前の花。二人の門出を見届けるように、見守るように俺たちを包む。
美夜はしゃくりあげながら言う。
「……私、生きていていいの?咬介と一緒にいて、許されるの?」
齧り付くように激しく抱きしめられ、美夜は声を上げて泣いた。確かめるように強く握られた手に光る、翠の指輪が、二人の証人となるように佇んでいる。
「私は───咬介と共に生きたい。一緒にいさせて」
掠れた小さな声だが、確かに伝わった言葉。
蒼の空は祝福するようにどこまでも広く延びていた。




