↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翡翠の乙女と双頭の紅獅子  作者: 棗健
破壊───真相───
PR
72/78

16-6

「そうさ!!お前が不幸の元凶なんだ。お前が側にいることで、周りの人間はどんどん蝕まれ病に冒される。今だってそうだ。憂介と咬介はお前をめぐり対立しているし、紅獅子はお前がいることで滅亡する。それに枯渇血病はやがて死に至る。今回憂介は一命を取り留めたようだが、今度は咬介だ。お前が咬介を殺すんだよ!!」


「やめてぇぇ!!」


美夜は叫び、その場に崩れた。珠代だった剣妖は自身の鎌についた美夜の血痕をひと舐めし、感嘆の声をあげる。

「───!これが星の力……!身体中から力が漲っておるわ!!」


禍々しい緋色の覇気を出しながら勢いよく鎌を振り上げる。それだけで大風が吹き、咬介は後方まで飛ばされ背中を激しく打った。


「ぐ……」

立て直そうとした瞬間、直ぐそこまで来ていた剣妖は咬介の左胸めがけて鎌を突き刺そうとした。


───!!


衝突音の後、咬介は眼を見開き驚愕の顔をする。鎌の攻撃を、白兎刀で捉えて咬介を護ったのが僕だったからだ。

「憂介、お前───」

「礼は後でいい!今すぐ美夜を連れて逃げろ!」

「こざかしいわ!!」


剣妖は叫ぶと両の鎌を振り翳して大風を起こし、まるで竜巻のように激しくうねりその場を破壊していく。

「翡翠の乙女はこちら側にある。殺して血を啜りお前らなど───」

「させるかよ!」


激しい衝突音をさせながら、黒烏刀と白兎刀が鎌の刃を捉え睨み合う。二人がかりで挑むものの、力を得た剣妖の前では力負けするようにじりじりと追い詰められていく。

竜巻の風が後方より忍び寄り、僕と咬介の足元を攫う。バランスを崩し一瞬の隙をつくと、剣妖は大鎌で咬介を袈裟斬りした。


「ぐぁッ……!」

斬撃音と共に咬介が倒れ、血飛沫が上がった。

「こ……!咬介!!」


次の斬撃を与えるべく、大鎌が頭上に翳された。その時。

「やめてぇー!」


剣妖の背後から羽交締めて、その動きを美夜が止めた。

「ダメだ美夜!来るな!!」


「わざわざ血を寄越しに来たのかい。馬鹿な娘だねぇ!」

簡単に美夜を振り落とし、肩を鎌で斬りつけ攻撃した。

「あああッ!!」


美夜の肩から血が滴り、剣妖は眼を輝かせると傷口に貪りついた。恍惚の顔を見せ、湧き上がる力にその身を震わせる。

「簡単には殺さないよ。お前は貴重な源なんだ。これからも私に力を与え───……ぐあっ!?」


剣妖はいきなり声を上げ、その場でのたうち回る。体がゴボゴボと膨らみ中から気泡のようなものが現れ破裂すると、激しい断末魔の雄叫びをあげた。


「ぐぉお……い、一体何が……!」

「それが星の力だ……!」


僕は白兎刀で剣妖の心臓めがけひと突きした。緑色の血を吐き、剣妖は信じられないとばかりに崩れゆく自身の体を眺めた。


「星の力は毒にも薬にもなる……。邪悪に塗れたお前ら剣妖には、美夜の血液は死に至らしめるほどの毒だったということさ」


剣妖は最期まで何かを言おうと叫んでいたが、ついに物言わぬ灰燼に変わり消え失せた。



───紅獅子家の者が翡翠の乙女を側に置く理由。それは力の増幅だけじゃなく、いざとなれば剣妖を殺す毒として利用していたからだ。文献にはそう書かれていたが、いざ目の前にすると俄かには信じられないほどの圧倒的な力に慄いた。そして思う。───これほどに強い力、咬介も幾度となく星の祝福を受けたようだが、何も反動はないのだろうか。───


咬介を見ると、胸に大きく受けた斬撃で顔を歪ませ呼吸も浅く、上肢を起こすも血が止まらないようで苦しんでいる。

「こ、咬介……!」


美夜は自分の血塗れの肩を抑えながら咬介の元へ近づいた。咬介も美夜に気づくと、かろうじて動く左腕で美夜を抱き留め、口付けた。


───瞬間、黒の覇気が上がり、血は止まり傷口が粛々と塞がっていく。

───杞憂のようだったな。剣妖には毒でも、咬介にとっては治癒と回復の力だ───。


そう思ったが、美夜は口付けから解放されると咬介から距離を置き、顔を青くしながら言った。


「───駄目。私といると、星の呪いで貴方はいつか……死んでしまうわ」

「……何言ってやがる。今俺を回復させただろ。これは呪いなんかじゃねえ」

「でも人から奪った生命力なのよ!いつかあなただって枯渇血病に……!」

「美夜!」


僕は叫び遮った。

「翡翠の乙女のこと、星の祝福のこと……黙っていてすまない。きっと混乱していることだろう。だけど歴代の翡翠の乙女は皆紅獅子の者と協力して───」


「やめて!私はもう貴方たちといられない!!」


ふらふらと出ていこうとする美夜の手を引き、肩の治療をすると説得して別室へ運んだ。咬介ももう立ち上がれるようだったが、黙って僕たちが部屋から消えるのを見ていた。


───美夜が忽然と姿を消し、失踪したことに気付いたのは、翌日の朝だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。