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目が覚めると、裸で咬介の腕に包まれていた。昨夜はあのまま二人で気を失うように寝てしまっていたらしい。頭上には規則的な咬介の息遣いが聞こえる。どうやら熟睡しているようだ。
起こさないように静かに起き上がり、湯を浴びるために軽く服を羽織って下の階へ降り立った。
洗面所の鏡に映し出された姿は、首や胸に無数の赤い花弁が散っており、思わず赤面した。咬介に愛された証だ。はじめは恐ろしくて痛くて、もう二度としたくないと思ったが、今回は心から咬介を受け入れたことで、とても満たされ涙が溢れるほどの多幸感に包まれた。
───本当に不思議だ。心持ち一つで、こんなにも変わるなんて───。
湯を浴び石鹸を泡立て身体を丹念に清めていると、バタバタと音を立て咬介が勢いよく浴室の扉を開けて入ってきた。
「え!?な、なに……?どうしたの?」
「……勝手に俺の前から消えるんじゃねぇ」
小さく言うと、安心したように長く息を吐き私を抱きしめた。
居なくなったと心配したのだろうか。まるで子供のような言動に、内心可愛いなと笑いながら大丈夫だからと言って腕から抜ける。
「……もう、濡れちゃって……」
濡れた衣服のまま佇む咬介に嗜めるように言うと、そのまま黙ってその場で脱ぎ出す。目のやり場に困り後ろを向くと、無防備な背中を覆うように力強い腕が伸びてきた。
「こらっ!もう、しないからっ!」
咬介の腕を叩いて抗議すると、不服そうに唇を尖らせてじっと見つめてきた。先ほどあれだけしたのに、バケモノ級の体力だ。浴室から無理やり追い出して、再び身を清める。この後もう一度休んで、それからまた仕事をしないと───。
体を拭き、まだ陽が登らない時間なのでもう一度ベッドで微睡んでいると、睡魔に襲われた。次に目を覚ますともう昼前で、今度こそ起き上がると咬介も憂介も既におらず、出かけたようだった。私はメイド服に身を包みながら思う。
またこの服を着ることになるなんて───。
大して日は経過してないが、また咬介付きのメイドとして過ごす日を思い少し顔が綻ぶ。
私は、咬介の側にいたい。そのためなら、たとえ主人とメイドといった身分違いの関係でもいい。
突然、チャイムが鳴った。
「───はい、どなたですか」
ドアを少し開け、様子を伺うと、アッと声をあげそうになった。女は悠然に微笑みながらも体を開いたドアの隙間に捩じ込ませ、言う。
「こんにちは、美夜さん。ちょっといれて貰える?」
その女性───珠代さんは、微笑みつつも笑っていない冷徹な視線を向けていた。




