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ようやく緊張の糸が切れ、遅れて体が震え出した。咬介は苛立ちを抑えられず、私に一喝する。
「てめぇ……フラフラ出歩いてるんじゃねぇぞ。俺が来なかったらどうなったと思ってやがる」
「だ、だって……咬介もあんな風に言われて腹立つじゃない」
「だからって事をいちいち荒立ててるんじゃねぇ。何もできねぇんだからせめて大人しくしてやがれ!」
散々な言われように、ムカムカと苛立ちが迫り上がってくる。
「そんなの……咬介がさっさと先に行っちゃうのが悪いんじゃない!私だって心細いし一緒にいたかったのに!」
慣れないハイヒールとドレスで着飾ったって、所詮私は居場所のない汚い裏切り者として周囲から白い目で見られてしまう。咬介が隣にいてくれるだけで、きっと安心できたはずだったのに。
不平不満は止まらず、でも面と向かって言う勇気はないため背中を向けて言う。
「……憂介はエスコートしてくれたわ!手を取って優しく歩いてくれた。貴方にもあれだけの優しさがあれば良いのに!」
しばらく沈黙が続き、気まずい空気が流れる。
……やっぱり言わなきゃ良かった……
でも言ってしまったものは取り消せない。黙っている私に、咬介はああそうかよ、とだけ言って何かを投げつけてきた。それは私の背中に当たるとぱさりと地面に落ちる。拾い上げると、絆創膏だった。
「え……これ……もしかして、靴ずれの……」
顔を上げるも、もうそこに咬介の姿はなかった。咬介は私が靴ずれでうまく歩けないことに気づいて、それで絆創膏を探しに先に行ってくれてたんだろうか。
───ああ、またやってしまった。咬介の不器用な優しさに気づけず、あのひとを傷つけてしまったかもしれない……。
後悔しても謝ることもできず、私はその場に立ち尽くした。




