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「おい……!?」
咬介は肩を掴むと、顳顬から血が出ていることや破られた服の状態に気付き、一瞬で青筋を立て全身から怒りの覇気を迸らせた。静たちは近くに居ることすら恐怖を感じるほどに、強く重たい禍々しい怒りの空気に身を縮こませ、緊張が奔った。
その時、ひとり攻撃を逃れた男が的外れに銃を撃ちながら、大きな獣を携え暗闇から現れた。咬介たちは柱の影に隠れる。現れた獣は大きさと獰猛さから見るに、───……
「剣妖!?何故人と一緒に……!」
剣妖は勢いをつけ突進し、静と美夜めがけて牙を覗かせ襲ってくる。侘助と捨郎は廃屋にあった鉄材を持ち応戦し、今のうちに逃げろ!叫んだ。
「こいつは俺らが丹精込めて育てたペットさ。服従するように言い聞かせてる。あいつらを喰っちまえ!」
命令された剣妖は激しい雄叫びをあげ、素早い動きで侘助と捨郎に体当たりし、はるか後方まで突き飛ばした。
「ぐぁッ……!」
全身を打ち、頭と体から血を流す。その様子を見て咬介も剣妖に立ち向かうが、急ぎ駆けつけたため手元には剣妖を斃すための刀、黒烏刀がない。しかも、左腕からは血が滴っている。先程前に出た際に銃弾が左腕を掠めていたのだ。
───万事休すか。───
「咬介!待たせたな!!」
服部が急遽現れ叫んだ。手には黒烏刀が握られている。そのまま勢いよく宙に向け投げ、パシッと音をさせ咬介が掴み取った。
「服部、助かった」
「ガハハ、屋敷まで取りに行ってたら遅れちまったい」
咬介は気を失ったままの美夜の顔を掴み無理やり上げると、顳顬の血を舐め上げた。途端に黒い覇気が咬介の体から立ち上り、刀を鞘から取り出し剣妖に斬りかかった。一刀両断し、轟音を立ててその巨体は沈んだ。
「……凄い。瞬殺ね」
「……あれが、翡翠の乙女の力……か」
静と服部は顔を見合わせる。剣妖を斃され、男は慌てて逃げ出そうと、咬介に向け発砲した。激しい銃撃音が廃屋内に響くも、その銃弾は咬介の脚を掠めはしたものの当たらず、まるで豹のように身体をしならせ、その後の銃撃も軽やかに避け拳銃を奪うと簡単に制圧した。腕と脚からは掠めた銃撃の血が滴っているものの、気に留めることなく倒れた男の体の顔面目掛けて蹴り飛ばし斃した。
伸びていた犯人達もようやく意識を戻すと、縛られている状態であることに気づき、おい放せとがなりだす。咬介はゆっくりと振り向き、
「お前ら……人の所有物に手ェ出して死ぬ覚悟はできてんだろうな」
修羅のように凄みをきかせそう言うと、目にも止まらぬ速さで男を蹴り上げ、倒れた拍子に顔面を踏み潰した。鼻や歯が折れる音と断末魔のような悲鳴が辺りを包む。咬介は怒りで我を忘れながら他の男達にも制裁を加えていき、服部は静たちに先に帰るよう指示して立ち去らせた。




