10-2
次に目を覚ますと其処は廃屋で、猿轡をされ手足も拘束された状態だった。自由も利かず辺りには何もない。一体何が起きたのかと混乱していると、凶悪そうな男たちが数人やって来て顔を見合わせる。
「目を覚ましたか」
下卑た目と笑みを浮かべながら、私の姿を舐め交わすように見つめる。
「中々の上物じゃねぇか。このまま女郎屋へ売り飛ばすのが惜しいな」
「まずは身代金を要求して」
「この格好を見ろ。何処かの女給だから身代金は取れねぇよ」
「売る前に俺たちで鮮度を確かめてやらなきゃな」
悍ましい声が聞こえてきた。そういえば前に、婦女子が襲われる事件があったと憂介が言っていた。もしかするとこいつらはそのグループなのだろうか。男たちのうち一人が拳銃のようなものをちらつかせ威嚇する。
「これが分かるか?死にたくなけりゃ大人しくしておけ。ところでお前はどこの屋敷の使用人だ?」
猿轡を外され問われる。格好から使用人だと判断されたらしいが、怖くとも主人の名前は決して明かすつもりはない。果敢にも睨みつけ黙っていると、
「おい、聞いてんのか。話したくなるようにしてやろうか?」
そう言って地面に頭を叩きつけ身動きできないようにされ凄まれる。脳震盪を起こしたように眩暈が起き、顳顬からは打ちつけた時に擦りむいた血が流れた。おい、大切な商品に傷つけんなよと別の男が言い、上肢を起こされると、今度は勢いよく服を破かれた。そのまま背後から胸を鷲掴みにされ揉みしだかれる。途端に嫌悪と恐怖で肌が粟立ち、声を出して抵抗しようにも意に介されず行為は続けられる。
「まずは俺たちが楽しむとするか」
下卑た声でまるで玩具のように身体を弄ぶ。声にならない声で叫ぶも、周りの男たちは笑ってその様子を見ているだけ。破れた服から肌が覗き、胸の敏感な先端部分を無理やり摘んでは刺激を与えてくる。感じるよりも恐怖が勝ち暴れる中、声にならない声で必死に叫んだ。
───助けて、誰か、……咬介───!!
その時、ヒュッと風が凪いだ音がし、煙草の匂いが鼻を掠めた。それはいつも嗅ぎ慣れている銘柄の匂い───。突然、背後にいた男が薙ぎ倒され地に伏し泡を吹いて倒れた。
「誰だッ!!」
男たちは何が起こったか分からずに、それでも警戒し外に向けて拳銃を向けた。私は男が倒れたはずみで一緒に地に倒れたが、あたりには誰もいない。廃屋なので辺りは暗く暗闇に包まれるものの、月の光が雲間から差し、辺りをぼんやりと照らした瞬間、小さな声で、一、ニの、と声がしたかと思うと、三、の掛け声と共に男たちは一斉に頭を蹴飛ばされ倒れた。
「美夜ちゃん、大丈夫かい!?」
「良かった、もう大丈夫です」
見ると侘助さんたちと咬介が立っており、男たちはピクピクと痙攣し倒れたまま静かになった。どうやら皆が窮地を救ってくれたようだ。静さんは私の肩に服をかけてくれ、侘助さんと捨郎くんは男達を拘束し縄で縛る。咬介は私が無事だとわかると、安堵の息を漏らした。お礼を言おうとしたが、殴られた衝撃と安心して気が緩んだのか、そのまま静さんに肩を任せる形で気を失ってしまった。




