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次の日、優二郎叔父さんが見舞いに来てくれ僕の眼を見て驚き、そして狂喜した。肩を抱き締め、よかった、よかったと続ける。───それは命拾いしたことに対してなのか、それとも開眼したことを指しているのかは分からなかったが、経過も良好であることを伝えると、早速保守派の連中にも知らせなければ、と席を立とうとした。
「あの、叔父さん。美夜は……どうしてますか?」
面会謝絶にしていたからしばらく会えておらず、寂しい思いをさせてしまっているだろう。でも様子を聞くことは許されると思い尋ねるも、叔父さんは渋い顔をしながら、
「彼女は……暇を出した」
驚きどう言うことかと尋ねると、
「憂介。お前には以前から婚約者がいることや、その女性に失礼がないようにと強く言っていただろう。それをあんな使用人の女にうつつを抜かすなど……」
───叔父さんは僕たちの関係に気づいていた。気付いて、美夜を追い出したんだ。
「どうしてそんな勝手なこと!」
「勝手なことだと!?お前こそ正気か!?お前は紅獅子家の頂点に立つ男だぞ!あんな出自のわからぬ下賤の女と一緒になれるとでも思っているのか!」
一喝され、叔父さんは背を向けながら続ける。
「それに今、お前は咬介に最大の借りを作った状態なんだぞ。……あいつが言えば、お前は財閥を譲り明け渡さなければいけないんだ。全てが咬介たち元老院派の思うつぼじゃないか。今から巻き返しを図るためにどうすればいいか、聡明なお前なら分かるだろう?」
僕は黙ったまま、叔父さんの意図していることを悟る。
僕の婚約者として白羽の矢が立ったのが、珠代さんという西園寺グループの令嬢だった。彼女は紅獅子財閥の最大の出資頭取の娘であり、今後西園寺グループとの協力なしに僕たち保守派の再建は不可能だ。……美夜とは、いずれ断ち切らなければならない絆だったことは、わかっている───。
「……さよならすら言わせてもらえないなんて……」
恨み言のように呟くと、病に伏せた姿を見せたくないと言ったのはお前自身だろう、と念を押された。ベッドの上で無力に震える拳を強く握りしめる。
美夜は、紅獅子をとり自分を捨てた僕のことを恨むだろうか?せっかく生きながらえたというのに、また会うことも叶わないなんて。
あの日約束した海に、もう一度行きたかった。海で、───本当は婚約者がいることを伝えるはずだった。……伝えたところで、僕はどうするつもりだったんだろう?許してもらうつもりだったのか、それでも紅獅子ではなく美夜を選んだだろうか。
自問しながら僕はただ静かに、窓の外の景色を見つめ続けた。




