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「……だからって、憂介が死んじゃったら意味がないじゃない!紅獅子の後継者が居なくなったら、それこそあなたの大切にしているすべてが無くなるわ!」
「それならもう手は打ってある」
優二郎様は冷たい目をしながら言い捨てる。
「憂介は婚約者との間にすでに子供をもうけている。その子が成長するまで現総帥にまだ現役として尽力頂き、成人してから次期当主になってもらう。紅獅子の血脈を絶やすことは、私の目が黒いうちは許さん」
───え?なんて言ったの?
あまりの衝撃に、途中から言葉が入ってこなかった。
子供?憂介に、婚約者……?いったい何を言っているのか理解できず、固まる。優二郎様は嘲笑うように、
「憂介にとってお前など、所詮ただの遊びの一人に過ぎん。財閥の御曹司が使用人如きに本気になるわけがないだろう。憂介が婚約者との間に成した子供が、これからも繋いでいく。紅獅子の血筋は、これからも続いていくのだ」
呼吸は浅く、冷や汗が止まらない。信じられない、信じたくない。でももう、何が真実かわからない。私が信じ着いてきた二人は、一体何だったのか。
私は勢いのまま車から出て駆け出していた。雨が激しく身体を打とうと構わず、行き先も決めずにただあてもなく走り彷徨った。頬を濡らしているのが雨なのか涙なのか、もう分からない。
憂介が死ぬなんて考えたくない。あの人を今も深く愛している。
それでも、婚約者がおりその人との間に子供がいるなんて。私を、ずっと裏切っていたなんて。そんな話、私は知らない。信じたくない───。
白夜会からずっと悪夢を見ているようだ。フラフラになりながら、ついに足が攣り道端に躓き倒れてしまう。もう何処かに消えてしまいたい。それでも屋敷には帰らねばならない。私が今帰ることができる場所は、あそこしかないのだから。しかしその屋敷も、まもなく出ていかなければならないのだ。嗚呼、全てがかりそめで偽物だ。
気がつくと雨は止み、夜は明け、もう朝日が登ろうとしていた。……眩しい朝だった。




