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そのとき、真白の閃光が目の前を遮り、憂介が剣妖の腕を斬り捨てた。手には白兎刀が握られており、斬り口から白い煙が蒸気と共に出ている。
「この御神刀があればお前を倒せる。───美夜、大丈夫か!?」
手を差し伸べられ、助けられたことに安堵し涙が滲んだ。手を取ろうとした次の瞬間。
憂介は咳込み、血を吐いてその場に崩れた。一瞬何が起こったかわからず、絶叫する。
「いやぁぁ───!憂介───!」
剣妖は腕を斬られただけでは死なず、長い舌で私の身体を拘束し、高く掲げた。ギリギリ、と強く締め付けられ息ができない。このままだと骨が折れてしまいそうだ。
「……っ、くぁ、……!ゆうす、けッ……!」
息ができない。血の中で倒れている憂介の姿が霞み、意識が遠のいていく。
轟音と共に今度は黒の光が薙ぎ、舌が斬り落とされ私の体も一緒に地面に落ちた。
何が起こったかわからないまま眼を擦り見上げると、そこには黒烏刀を片手に剣妖と対峙している咬介の姿があった。黒烏刀から出ている黒い光。先ほど助けてくれたのは、咬介だったのか。
「……よぉ、チンクシャ。無事だったならちょっと手ェ貸せ。……俺様もこんなデケェのは久々なもんでな」
「な、何言って……」
動けないでいる私の着物の袂を強引に掴み引き寄せると、咬介は無理やり、───口付けた。
「!?───ッ、!……ゃ、めて何!?」
叩いて引き剥がした。この非常事態に一体何を……!
すると、咬介の身体から黒い覇気のようなものがあがり、私は圧倒されその場に倒れた。
「やはり……な。礼を言うぜチンクシャ。特等席で見てろ」
そう言うと、その場で刀を大きく振り翳した。それだけで強風が起き、剣妖は血飛沫を上げ仰向けに倒れる。すかさずその上に立ち、
「くたばれ」
剣妖の頭に刀を突き立てた。凄まじい断末魔と共にその身体は崩れ、煙ように消えていく。───紅獅子の刀は、剣妖を灰塵と化し、その存在ごと消す。噂には聞いていたが実際に目にするのは初めてだ。圧倒されて言葉も発せられない私に、
「───すげぇ。身体が軽い。おい女、やるじゃねぇか」
「や、やるじゃねえかって……今のはあんたが……」
「俺だけの力じゃねぇよ。翡翠の眼。───星のの力は只の噂じゃなかったってことだ」
乱暴に私の髪を掴み、顔を上げさせる。
「やはり気に入った。お前は俺のモンだ」
何が何だかわからない。怒涛の展開に頭が追いつかない。ただ、強引に引っ張られて頭は痛くて、この男が私をどう扱い利用しようとしているかは分かる。
「おいオッサン!!」
傍で一部始終を見ていた優二郎様は呼ばれ、肩をびくつかせる。
「誰の刀が本物じゃないって……?お前も見ただろう。この刀が剣妖をぶっ倒したところをよ」
鈍色の切先を向けて凄む。優二郎様は絶望しその場に崩れた。騒ぎを聞きつけ、ようやく救護隊が駆けつけた。私は咄嗟に咬介を突き飛ばし、憂介に駆け寄る。
「憂介、しっかりして、憂介ッ!!」
身体は冷たく、揺さぶっても起きない。救護隊は急いで憂介の身体を担架に乗せ運ぶ。近くには憂介の白兎刀が、その白い鍔を憂介の血で汚し、転がっていた。




