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「───皆様、本日はお忙しい中集まりいただき、誠にありがとうございます。こうして無事に、紅獅子財閥の今後を取り決める本会を開催できますこと、恐悦の極みで御座います。
本日は紅獅子家の親族のみならず、財閥経営幹部の方々も一堂に会し、次期当主兼紅獅子財閥次期総帥ついて話し合う貴重な機会として、有意義な時間となることを期待しております」
舞台袖から、憂介と咬介を呼び寄せる。
「───紅獅子憂介様と、九頭咬介様です。お二人は共に先代であられました、紅獅子優一郎様の御子息で───」
「そこまでだ」
男の声に遮られ、司会は中断する。客席側から、優二郎様が舞台に向かい叫んだ。
「そこにいる男は先代の子供ではない。そう偽っているだけの詐欺師だ!」
客席側はザワザワと響めき、視線は咬介たちに集中する。私も袖からハラハラしながら見守る。
「莫迦かオメェ。俺は正式に紅獅子の血を引いた後継者だ」
咬介は自分の眼を指差し、
「この眼と顔に見覚えがないとは言わせねぇぜ?御宅に飾ってあるバカでけぇ先代の肖像画、誰かに似てると思わねぇのか?」
「だったら証拠を見せろ!その手に持つ刀、本当に紅獅子の御神刀か?ただの模造刀をそうと偽り───」
ずん。強い地響きがした。
その次に感じたのは、強い揺れ。───地震だ、と思った瞬間、それが地震ではなく、何か巨大なモノが闊歩している衝撃だと気づく。轟音と共に、腐臭を撒き散らした巨大生物が突然現れ、鳴き声とも叫び声ともわからない音を発し耳が潰れる思いがした。その見た目はまさしく怪物で、口は裂け中から長い舌を出している。───剣妖だ。
私は初めて見たその姿に慄き、叫びそうになるのを必死で堪えようとしたが、突然現れた悍ましい姿に客席の者たちは皆叫び逃げ回っている。
「駄目だ皆さん落ち着いて!剣妖は音に反応する!叫んでは駄目だ!!」
憂介は叫び、壇上から降りて避難を呼びかけるも、パニックになった会場は叫び声と泣き声が飛び交う。そこへ、優二郎様が叫んだ。
「ほら剣妖だぞ!その刀が本物の黒烏刀だというのなら、斬り伏せて退治してみせろ!」
信じられない言葉に言葉を失う。優二郎様、この非常事態に一体何を言っているの!
剣妖は会場の装飾品や天井を壊して椅子を薙ぎ倒し、足元にいた数名を踏み潰した。断末魔のような声が響き、阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。女の子が一人取り残されているのが見え、剣妖の手が伸びようとしたとき、
「やめて───!!」
思わず叫んでいた。
剣妖は声に反応する。私の声に気付き、進路を変えこちらへと突進してきた。逃げたくとも、腰が抜け立つことができない。まるで連写機のようにゆっくりと襲ってくるのが見え、思った。
───ああ、私はここで死ぬんだ───。




