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まだ細かい打ち合わせがありその場を離れられない憂介に代わり、私は会場の中を回って見ることにした。先ほど憂介の側を離れるなと言われた手前渋ったのだが、咬介や元老院派の連中が変な動きをしていないか偵察するようにと言われたため、広い会場内を探索して回る。
普段見ないような絢爛豪華な調度品、高い天井や豪奢なシャンデリア。場違いで身が縮こまるような思いがする。
今日は紅獅子財閥の関係者の他に、憂介の血縁関係の者たちもいる。皆私を一瞥すると、聞こえるような陰口をたたく。
───役立たずな翡翠の乙女、まだ図々しく紅獅子家にしがみついてるわ───
昔から言われているのでもう慣れっこだ。陰口のバリエーションもワンパターンだし、もう気にもしてない。その場を発とうとすると、
「よぉ、チンクシャ。馬子にも衣装だな」
振り向くと、漆黒の燕尾服に身を包み髪を流した状態の咬介がいた。
いつもと違う様子に思わず見入ってしまう。前から思ってはいたが、背が高く異国人のような体型をしているせいで、西洋風の服も難なく着こなしているし、サスペンダーで長い脚がさらに強調されている。
おいなんとか言えよ、と言われ慌てて意識を戻した。こちらも普段着ない振袖を着ているせいでうまく動けないし、悪態を吐かれたことに反論してやるはずが、普段と違う装いの咬介に動揺してしまい言葉が出ない。
手に、以前見た黒烏刀を無骨に持っている。この後皆の前でその刀身と剣舞を披露するんだろう。不謹慎だが、紅獅子の闘神の名を轟かせた伝説の二振り、黒烏刀と白兎刀が壮観に並んでいる姿を早くこの目に焼き付けたい。
「おめぇも来てるとはな。まぁせいぜい楽しんでいけよ」
「よ、余計なお世話よ!」
「ところでなんだ?あの連中は」
咬介に睨まれ、私の陰口を言っていた女たちは慌てて蜘蛛の子を散らすように去っていく。
「───拾って貰ったのに星の祝福を使えない役立たずの私を笑ってるのよ。もういいわ。事実だし」
咬介は私の瞳の色を見て、
「翡翠の乙女、か。星の祝福は紅獅子の闘力や生命力を与えるなんていう苔が生えたような与太話、まだ信じてる連中がいるんだな」
「あなたも知ってるのね」
「まぁな。───だが、案外そうじゃないかもしれないぜ」
「え?それってどういう───」
けたたましくベルが鳴り、会話は中断させられた。ついに白夜会が開催される。慌てて憂介の元に戻ると、客席にも多くの関係者が集まってきている。舞台には大きな舞台幕の下に司会の男がおり、開始時刻を報せた。
白夜会が、始まる───。




