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ついに白夜会が開催される日になった。
その日私に用意されたのは、薄桃色に大判の牡丹の画が入った振袖。こんなに豪華で素敵な着物は初めて着るため、朝から緊張して気分が悪くなってしまった。車で現地に入ることになったけれど、頭の中は無事にこの日を終わらせられるか不安でいっぱいだ。
憂介からは特に付き人として何かしろとは言われていないけれど、咬介や元老院派が何か仕掛けて来るかもしれない。
猜疑心に包まれながら現地入りすると、憂介は打ち合わせのため先にホテルへ着いており、数人の男と舞台上で話し合っていた。
「憂介……様」
忙しそうにしているが、到着を告げるため客席側から近づいた。舞台下から見上げる憂介の姿は、いつもと違う装いもあり、遠く手の届かない存在のように見える。
私に気づいたのか、憂介は表情を和らげ、近くの者たちを一旦遠ざけ誰もいないことを確認してから私を舞台袖まで案内した。
「美夜。……綺麗だよ。今日はよろしく」
「ええ。ありがとう。でも一緒に現地入りしたかったのに」
「はは、僕はやることが多いからね。今もバタバタさ」
「私にも何か出来ることはないかしら」
手持ち無沙汰になるのが嫌だったため申し出るも、憂介はきょとんとし、そしてすぐに笑って、
「大丈夫だ。ただ僕のすぐ近くにいてくれればいい。それだけで僕は落ち着いてられるんだから」
そうは言っても憂介の表情は硬く、緊張しているのが手に取るようにしてわかる。憂介の腕の中には桐の刀箱があり、───大きさ的に白兎刀だろうか。大事そうに持っている。
「憂介」
奥から、優二郎様がやってきた。いつもにも増して厳格そうな雰囲気と装いだ。頭を下げる私には目もくれず、憂介の腕の中の桐の箱を指さす。
「白兎刀を持ってきたようだな。大事なものだ。肌身離さず持っておけ。───そして美夜」
いきなり名指しされ、思わず背筋を伸ばす。
「今日は使用人ではなく、憂介の付き人としてお前を呼んだんだ。白夜会中も憂介の近くにいるように」
「はいッ!」
それだけ言うと、背を向けて去っていく。
「───そう、憂介の側に居てくれないと困る……」
小さく呟いていた。




