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翡翠の乙女と双頭の紅獅子  作者: 棗健
獣の弱点
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14/78

4-5

その日、疲れ切った精神の中、夢をみた。


写真の女の人が赤子を抱いてあやしている。夢だからか色はなく、声も篭っておりうまく聞こえない。だが女性は優しく赤子に微笑みかけ、赤子も楽しそうに声を上げて笑っていた。

───幸せな夢だ。私は近寄り、会釈する。すると女性は赤子を見せてくれ、私も覗き込んだ。その赤子は、つぶらな瞳をこちらに向ける。紅く、燃えるような瞳───。


コツン、と扉を叩く音がして目が覚めた。まだ朝陽が登りきっていないような早朝に、誰だろうか。上着を羽織り部屋の鍵を開け、辺りを見渡すも、そこには誰もいない。代わりに、足元に袋が置いてあった。


なんだろう、と中身を確認すると、それは新しいメイド服である黒のワンピースと、真白なエプロンだった。

夕食の折に私が困っていたのを見て、憂介が用意してくれたんだろうか。燃やしてしまって途方に暮れていたものだからありがたい。すると丁度、廊下奥から憂介が歩いてきた。


「おはよう美夜。早いね」

「憂介こそ。もう体調は大丈夫なの?」

「ああ、おかげさまで。心配かけたね」


憂介は私の手にある服に目をやる。


「あ、ありがとうこれ。私の新しい仕事着、用意してくれたのね。助かったわ」


すると憂介は不思議そうに顔を傾け、


「え?僕じゃないよ?」

「ええ、それじゃあ、優二郎様かな───」


ワンピースをよく見ると、驚くほど丈が短い。それに立体的でフリルも付いている。確実に脚を晒してしまうような服だ。


「な……なによこれぇ!破廉恥よ!」


顔を赤くして慌てて袋に戻す。憂介はえー、勿体無い、なんて笑っている。誰が本当にこんなこと……と言ってハッとした。

厳しい優二郎様がこんな服用意するわけないし、だとすると、他にはあの男しかいない。でも、わざわざ私にこんな優しさを向けるだろうか。昨日のやりとりで、ヤツも私に情が湧いた……?


「ちょっとエッチだけど、僕は美夜がこのメイド服着てるところ、見てみたいなぁ」


能天気に笑う憂介に、顔を赤らめて何言ってんの!と叫んだ。ああ、きっとアイツも、私を辱めて笑ってやろうって魂胆なんだろう。


「〜ッ、咬介の奴!!絶対!!こんなの着ないんだからッ!!」


私は怒り心頭に発し、乱暴に袋ごと服を床に落とした。

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