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翡翠の乙女と双頭の紅獅子  作者: 棗健
獣の弱点
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11/78

4-2

戦局が悪く傾いたことがわかり、どうするべきか考えあぐねいていると、突然憂介が咳き込み椅子から倒れた。


「憂介!大丈夫!?」


慌てて駆け寄り支えてやるも、その身体は軽く、以前よりかなり痩せたことに驚いた。


「ああ、すまない……もう部屋に戻ろう。美夜もどうか早く休んでおくれね」


心配で部屋まで送ると言ったが、頑として受け入れず、憂介はフラフラと自室へ戻っていった。

心労が祟っているのだろうか。心配で胸が痛む。こんなとき、ただのメイドであることで何の力にもなれないのが歯痒い。世間や優二郎様たち紅獅子家にも認められた恋人であったならば、堂々と憂介を支えてあげられるのに。

皆が食べ残した夕食を片付けながら、自分に出来ることがないかを考える。

ふと、ある考えを思いついた。そうだ、こうすれば、咬介が次期後継者になる動きを一退させることもできるし、うまくいけばこの家から追い出すこともできるかもしれない。しかもこの方法は、今同じ場所に住んでおり比較的自由に動ける私にしか出来ないことだ───。


かなり危険だが、憂介を不安にさせているものを排除して、また元の平和な日常を取り戻してみせる。

その方法とは、咬介の部屋へ忍び込み、例の御神刀、黒烏刀を盗み出すこと───。


黒烏刀さえこっちにあれば、血統の正統性は認められず、紅獅子の後継者は憂介だと皆も納得するだろう。

───そうと決まれば、早速今夜決行してやる。


私は風呂の準備ができたことを咬介に告げ、脱衣所へ入っていったことを見届けると、早速部屋へ忍び込んだ。客間の中で一番いい部屋をあてがわれただけあって中は広く、大きなベッドに投げ出された服や酒瓶が無造作に置かれている。明日、これも掃除しなくてはいけないんだろうなと横目に見つつ、めぼしいところを探していく。


クローゼットを開け、服の山を掻き分け、段ボールをひとつづつ開けていくも見当たらない。憂介の持つ白兎刀と対になる刀なら、それなりの大きさがあるはず。きっと簡単にみつかる───。そう高を括っていたのだが、存外見つけられない。もしかしたらここではない、別の所に置いているのかもしれない。


時間もないため焦っていると、抽斗が目についた。何の気なしに開けてみると、中から綺麗に畳まれた縮緬を見つけた。


何かしら、これ───。恐る恐る広げてみると、中から写真が出てきた。セピア色で古く所々汚れて入るものの、大切に保存されていたことがわかる。写っているのは一人の女性。この人は───。


急に肩をぐいと掴まれ、上から強引に写真を奪われた。驚き咄嗟に振り返ると、風呂上がりで髪が濡れた状態の咬介が恐ろしい表情でこちらを睨んでいた。言い訳もつかない状況で、一瞬で体温は下がり、あ、あ……と情けない声が漏れ出て慌てふためく。

咬介は私の後ろ首を掴みベッドへ投げ倒した。凄まじい衝撃でアッと叫び動揺していると、すぐに上から覆い被さってきて手を拘束した。


「男の部屋に勝手に入ってくるなんて、これがどういうことか分かってんだろうな?」


獲物を追い詰めるように威嚇され見下げられる。恐ろしさで頭が爆発しそうだ。手足は冷え、喉はカラカラに渇いておりガタガタと震える体を止められない。昼間に感じた恐怖が甦る。


殺される───!


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