表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/9

サプライズ来店

土曜日の午前10時。駅から徒歩5分ほどのカフェ&グッズショップ「Cinderella Terrace」に着くと、すでに行列ができていた。店先ではスタッフさんが「本日限定メニューはこちらになります!」と声を張り上げている。


シンデレラガールズとタイアップしたこの店舗は毎週末、テーマ別コンセプト喫茶としてオープンするため大人気だ。特に今日は「パッション系アイドルフェア」の初日とあって、開店前から熱心なファンが列を作っていた。


(なるほど……可奈ちゃんたちメインの日か)


このところ休日に限らず平日も、なんとなく彼女たちの情報を探す習慣ができてしまっていた。昨晩も夜更かししながらライブのセットリストを分析したり、SNSでファン同士の交流を眺めたりしていたせいか、気づけば寝不足気味だ。


ようやく自分の番が回ってきて店内に入ると、あちこちから元気な声が飛び交う。


「お兄さん初めてですよね?今度の新曲チケット予約まだ間に合いますよ!」

「こちらの限定コースターはランダムですけど……レア絵柄も入ってますよ♪」


スタッフさんたちもアイドルたちを思わせる制服姿で接客しているからテンションが高い。メニュー表にはフルーツたっぷりのパフェやドリンクが並んでいる。中でもいちごミルクフロートはピンク色の綿飴までトッピングされており、まさに「パッション全開」といった見た目だ。


(よし、今日はこれを頼もう)


注文を済ませて席につくと、隣のテーブルでは大学サークルらしき男子学生グループが歓談していた。そのうちの一人が唐突に言い出す。


「なぁ、最近可奈ちゃんかわいいよな」

「分かる!最初はガキっぽいと思ってたけどさ、この間の配信で泣いちゃったとき……俺も泣いたわ(笑)」

「わかるー!!」


彼らはノートPCの画面をこちらにもちらりと見せてくる。ライブ配信切り抜き動画のようだ。そこには、ファンからの手紙を読み上げながら嗚咽する矢吹可奈ちゃんの姿があった。


(あ、昨日俺もそれ見たな)


胸がギュッと締め付けられる感覚は一緒だ。ただ、ここで声を上げて賛同する勇気はまだ持てない。代わりに小さく頷いてコーヒーを口に運んだ。


そのとき──店の奥からスタッフさんが呼びかける声が聞こえた。


「皆様!只今より店内スペシャルイベントを開催致します!今日はなんと……矢吹可奈さんがサプライズ来店してくださいましたー!!」


「え!?」「マジで!?」「来たぁああ!!」という歓声とともに、店全体が揺れるような勢いで盛り上がる。


俺も思わず椅子から立ち上がりそうになる。視線を向けると、店の入口から小さな影がひょっこり顔を出した。


──矢吹可奈ちゃん本人だ。


スタッフさんに促されるままにステージ付近へ移動してきた彼女は、マイクを手にこう叫んだ。


「こんにちは~! 今日はたくさんの方にお会いできて嬉しいです!私、矢吹可奈です!よろしくお願いします!!」


その瞬間、割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こる。俺も無意識に手を叩いていた。


(本当に来てくれたんだ……すごい……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ