Blooming Days
第二幕は新曲『Blooming Days』を中心に展開された。フリル付きワンピース衣装のメンバー達が舞台上で繊細な歌声を響かせ、観客とのコール&レスポンスで一体感を深めていく。
終盤、センター位置に立つ高垣楓さんが優雅に舞い踊った後、ステージ中央へ可奈ちゃんが駆け込んできた。
『私は、まだまだ未熟だけど……でも、歌うことだけは誰よりも愛しています!みんなの前で歌えることが、私の夢でした!』
涙ぐむ彼女を見て、隣席の女性ファンがハンカチを差し出す。彼女の勇気が胸に染み渡った瞬間、思わず目頭が熱くなるのを感じた。
「俺も……アイドルってすごいんだな」
呟きながら気づいたのは、かつて抱えていた不安や孤独感が薄れていることだった。自分がここで見つけた希望──それはきっと、彼女たちとの出会いそのものなのかもしれない。
エンドロールが流れ始めると同時に、再びスモーク演出とともにメンバー全員が再登壇。アンコールの『Thank You!』で締めくくりとなる中、会場のボルテージは最高潮に達した。
「ありがとうー!!また会いましょうねー!」
最後に笑顔で手を振る可奈ちゃんの姿を見て思った。
(次こそは、俺ももっと大きな声で応援したい)
ライブ終了後、帰り道で先ほど司会者から紹介された新人プロデューサー候補生らしき人たちを見かけた。彼らは互いに反省点や改善点を話し合いながら、真剣な表情でスマホメモを取っている。
その中の一人──あの握手を求められた男性ともう一度目が合った気がしたけれど、確証はないまま踵を返した。
帰宅後、汗ばんだ服を脱ぎ捨てて冷蔵庫を開ける。喉越し爽やかな炭酸水が体に沁みていく。
「今日は充実した一日だったなぁ……」
天井を見上げるだけで、あの熱気と興奮が蘇ってくる。明日からはまた仕事に戻らなければならないけれど、この経験が日々の励みになると感じていた。
スマートフォンでSNSを確認すると、「#カーテンコールフェス」の投稿が急増している。
《最高の時間を過ごせたよ!》
《新プロデューサー頑張ってほしいな!》
《可奈ちゃん泣かせちゃった……( ; ; )》
様々な感情が混じり合いながらも、確かなつながりを築いている人々。その輪の中に自分も少しだけ加われたような気がして、自然と微笑みが浮かぶ。
「さてと……次のライブもあるみたいだし、練習しなきゃな!」
ソファでゆっくりくつろぎながら、スマホでガイドブックアプリを開く。初心者向けレッスン動画を見つけて再生ボタンを押すと、画面内で明るい笑顔を見せながら振り付けを教えてくれる矢吹可奈ちゃんの姿があった。
(やっぱり可愛いよな~……)
そんな風に思いつつ、少しずつではあるけれど──自分の日常も変わっていく予感を感じながら、新たなページをめくる準備を整えたのだった。
「うおお……今日もすごい人気だな……」




