第8話 小物より目立つ自撮り
「いい? 画像を送る前には内容だけじゃなくて、映り込みまで確認しなさい。写真一枚で余計な情報は全部漏れるの」
オンライン会議の画面の向こうで、部下が「気をつけます」と神妙にうなずいた。
仕事中の養母は、今日も抜け目がない。
でも、その数時間後。
その慎重さは、スマホひとつで吹き飛んだ。
[LIME:アカネ]
(画像)
ん?
開いた瞬間、
俺の思考が止まった。
いや、待て。
小物どこだ?
画面の大半を占めてるの、
ふわふわの部屋着姿の養母なんだけど!?
しかも胸元のせいで、そっちにばっか目が行く!
これ事故だろ!?
画像の端っこに、
ちっちゃい白いマスコットが一応写っている。
いや、無理無理。
そのサイズ感で「小物見せたかったです」は通らないって!
ガチャッ!
「真守くん、どうしよう!」
うわ、来た!
しかもスマホ抱えて真っ赤!
嫌な予感しかしない!
「変な写真送っちゃったかもしれないの……!」
「あー……うん」
「お気に入りのマスコット見せたかっただけなのに、カメラ切り替わってるの気づかなくて……」
やっぱりそうか!
事故だとは思ったけど、
想像以上にひどい事故だよ!
「し、しかも部屋着のままだったし……。引かれたわよね?」
引くわけあるか!
むしろ心臓がもたないんだけど!
「いや、たぶん大丈夫だと思う」
「ほんと?」
「うん。でも、次からはちゃんと確認したほうがいい」
大丈夫だ。
少なくとも俺なら、
引くどころか画面閉じて深呼吸した。
……実際した。
「やっぱり変なふうに見えたかしら……」
「変というか、その……小物よりそっちが目立つっていうか」
「そ、そっちって……!?」
うわ、耳まで赤くなった。
今そこまで照れるなら最初から送るな!
いや事故なんだけど!
[LIME:シュン]
『びっくりしました』
『小物もかわいかったですけど、アカネさんのほうに目が行きました』
『でも、次からはもう少し気をつけてくださいね』
「ひゃっ……!」
養母がスマホを抱えたまま、その場にしゃがみこんだ。
「やっぱり見られてる……!」
「そりゃ見るでしょ……送ったんだから」
「でも、引かれてない……?」
「引いてはないと思う」
むしろかわいすぎて困ってるよ。
リアルでもLIMEでも。
「ど、どうしよう……恥ずかしい……でも、ちょっと嬉しい……」
そのまま顔を隠して悶え始める養母。
やめてくれ。
事故写真のあとにその反応まで見せられるの、
破壊力が高すぎる。
小物の写真ひとつで、
今日も俺の心臓だけが大事故だった。




