第6話 追いLIMEが止まらない
「いい? 催促は一回で十分。何通も送るのは相手に圧をかけるだけよ」
オンライン会議の画面の向こうで、部下が「すみません」と小さくうなずいた。
仕事中の養母は、今日も正論だ。
でも、その日の夜。
その正論は、あっさり自分に刺さることになる。
[LIME:アカネ]
『変だった?』
『忙しい?』
『ごめん、何回も送って』
『寝ちゃった?』
うわ、増えてる!
風呂に入ってる間に通知が四件。
いや、ちょっと待って。
さっきまで「何通も送るのは圧」とか言ってた人、どこ行った?
というか、これだいぶ不安になってるな。
ガチャッ!
「真守くん、私やらかしたかも……!」
うわ、来た!
顔が青い!
今にも泣きそうな顔で部屋入ってくるのやめてくれ!
心臓に悪い!
「シュンくんからすぐ返信来なかったから、つい何通も送っちゃったの……」
「あー……」
「絶対しつこいわよね? 重いわよね? 嫌われたかも……」
いや、四通連続はたしかにびっくりする。
でも、こんなの嫌われたくなくて焦ってるだけじゃん。
かわいすぎるだろ。
「大丈夫だって。びっくりはするかもしれないけど、心配してくれてるのはちゃんと伝わると思う」
「ほんと?」
「ほんとほんと。ちょっと待てばちゃんと返ってくるって」
大丈夫だ。
少なくとも俺なら、
こんなん来たら重いどころか心配になる。
……いや、実際いまめちゃくちゃ心配してるし。
「うぅ……でも、やっぱり送りすぎた……」
ベッドの端に座りこんで、養母がしょんぼり肩を落とした。
さっきオンライン会議で部下を注意してた人と同一人物とは思えない。
恋愛になるとポンコツすぎる。
[LIME:シュン]
『いっぱい来ててちょっとびっくりしました』
『でも、アカネさんが気にしてくれてるのがわかって嬉しかったです』
『遅くなってごめんなさい』
「あっ……!」
養母の顔が一気に明るくなる。
「よ、よかったぁ……嫌われてなかった……」
そのまま力が抜けたみたいに、俺の肩にもたれかかってきた。
待って。
近い近い。
安心した直後に寄りかかってくるな。
やわらかいのが当たってる。
俺の理性までふにゃふにゃになるから!
「ほら、だから言ったじゃん」
「真守くん、ありがとう……」
[LIME:アカネ]
『よかった。安心した』
送信して、数秒後。
既読。
「……えっ」
さっきまでふにゃふにゃだった養母が、またスマホを凝視した。
「既読ついたのに返事が来ない……」
早い早い早い!
また不安になるの早すぎるだろ!
リアルでもLIMEでも、今日も振り回されっぱなしだ。
……まあ、そんなところもかわいいんだけど。




