第11話 誰といたの?
「いい? 必要以上に踏み込むのは駄目。相手のプライベートは聞きすぎないこと」
オンライン会議の画面の向こうで、部下が「気をつけます」と頭を下げた。
仕事中の養母は、今日も線引きがはっきりしている。
でも、その日の夜。
その線引きは、LIMEの画面であっさり消えた。
[LIME:アカネ]
『今日、何食べたの?』
『今なにしてる?』
『今日は誰といたの?』
うおっ。
待て待て待て。
質問の距離、急に近いな!?
最初の二つはまだわかる。
でも最後の
『今日は誰といたの?』
は、だいぶ恋人のやつだろ!
いや、恋人なんだけど。
LIMEの上では。
しかもこれ、
ちょっと嫉妬っぽくて普通に嬉しいんだけど。
やばい。
顔がにやける。
ガチャッ!
「真守くん、やっぱり私、変なこと聞きすぎたかしら……!」
うわ、来た!
今日は青い!
さっきまで送る側だったくせに、もう不安でいっぱいの顔してる!
「何食べたのとか、今なにしてるのとか、その、今日は誰といたのとか……」
全部把握してるよ!
俺が今まさに見たからな!
「聞きすぎよね? 重いわよね? こんなの、相手からしたら怖いわよね?」
いや、最後の一文はたしかにちょっと強い。
でも、
嫌かって言われたら全然嫌じゃない。
むしろめちゃくちゃ嬉しい。
「別にそこまで変じゃないと思うよ」
「ほんと?」
「うん。嫌っていうより、気にしてくれてるんだなって感じると思う」
大丈夫だ。
少なくとも俺なら、
『誰といたの?』まで来たらちょっとにやける。
……実際いまかなりにやけてる。
「でも、踏み込みすぎって思われたら……」
「そこは聞き方次第じゃない?」
「き、聞き方……」
うわ、そこメモしそうな顔やめろ。
今は改善ポイント探す顔じゃないだろ。
「とにかく、ちゃんと返ってくるまで待ってみたら?」
「うぅ……そうよね……」
さっきまで部下に
『聞きすぎるな』って言ってた人が、
恋愛だと一気に知りたがりになるの、ほんとずるい。
[LIME:シュン]
『聞かれるの、嫌じゃないです』
『むしろ、もっと知ってほしいって思いました』
『今度はアカネさんのことも教えてください』
「えっ……」
養母が固まった。
次の瞬間、顔が一気に赤くなる。
「もっと、知ってほしい……?」
だめだ。
その一文、効きすぎただろ。
「ど、どこまで聞いていいのかしら……」
ほらもう次を考え始めた!
味をしめるの早い!
このままだと次は、
『今どこ?』
『誰といるの?』
『私のこと考えてた?』
まで行きかねない。
でも、そんなふうに距離を詰めたがってる養母も、
やっぱりかわいくて困るんだよな。




