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ダラダラ高校生のVRMMOプレイ録  作者: 乙川せつ
前章

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第64話 魔法と光の輝きを!

 ……さて、ここまで怒らせたのはいいものの。


 ――――――どーすっかな、コレ。


 今、マイクの先で憤怒の表情を浮かべているであろう男をこのまま放っておくのは正直嫌だ。

 腹の虫が収まらない。

 かといってぶん殴るのもダメな気がする。

 一応他国の軍幹部クラスだろうし。いやまあ、シルヴィアを連れ去る時点で国際問題待ったなしなのは明らかなんだけれども。


「……ありがとう……玲真……!」


「うおっ」


 今日は良く抱き着かれるなぁ。

 フィリアといい、シルヴィアといい。まあ、人と触れ合うことで安心できるのだろう。

 彼女が安心できるなら俺は喜んで抱き枕になろう。

 まあ、嫌な気分はしないし。


「あ、そうだ」


 シルヴィアの首に嵌められている機械の首輪に触れ、魔力を込める。

 瞬間的に『剣』を発現させ、首輪を両断。

 内部に刻まれていた魔法式も崩壊し、首輪自体がその構造を保てなくなる。


「よし、これで大丈夫なはずだ。変なとこあるか?」


「ううん、大丈夫」


「よかったよ、間に合って。……本当に、よかった」


 その時、文字通り壁が開いた。

 切れ目がなかったのに、だ。この部屋自体に魔法式が刻まれているのだろうか。流石世界一の軍事大国。

 魔法技術も大したものだ。


「ゆ、許さんぞ、貴様……! 日本人の分際で……!」


「おっ、あんたが首謀者ラスボスか?」


「ローレンハイツ中将……」


 現れたのは、眼帯を付けた初老の男。

 いや白髪だから顔より老けて見えるな。おっと、見た目のことを弄るのは良くないか。


「あのなぁオッサン、許さないはこっちの台詞なわけよ。

 命狙われてるのよ、普通に悪いことでしょ。そんなことやっておいてそっちが正当な権利を主張できると思ってるのか?」


「う……うるさい! 黙れ! 貴様の魔法は危険すぎる! そんなものを持っておいて自由にできると思っているのか!

 貴様が世界を滅ぼさないということが証明できるのか!」


「おっと痛いところをつかれた。まあ、俺の危険性は俺が一番よく分かっているわけだけどさ。

 正直、証明なんてできないよ。今回だって実際アメリカを潰そうかと思ってたしね」


「「…………⁉」」


 あ、本気にしちゃったよ。

 まあ三割くらいマジだったんだけどさ。あの時は完全に気分が高揚しちゃってて。


「……だけどそれも、あんたらが手を出してきたからだ」


「こ、このっ……ガキが……」


「ローレンハイツ中将……落ち着いてください。貴方らしくないですよ」


 あのーシルヴィアさん? それ追い打ちってやつじゃないですかね?


「黙れ……」


「ン?」


「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれ……ダマレ!」


「うぉっ……⁉」


 いきなりキレやがったこいつ。まあ煽ったのはこっちなんだけどさ。

 情緒不安定……ってわけでもないのか。


「日本人風情が、我が祖国アメリカに逆らって良いと思っているのか⁉ 

 おとなしく、私に従え!」


「うーわ……」


 出たよ人種差別。確か教科書では数百年前からあったらしいけど、人間は成長しないものなんだな。


「同じ人間だろうが。少しは客観的事実を見てから言え」


 まあ、こいつと同じとは思いたくないが。


「玲真……」


「ああ、悪いシルヴィア。もう行こう、これ以上付き合ってやる義理もない」


「こ……このぉおおーーーーーーーっ!!!!!」


「あ、危ない玲真!」


 奴はいきなり、攻撃魔法を放ってきた。 


 ≫高速発動式衝撃魔法と推測。『流王』によりノーダメージで反射可能なレベルです。


 よし、それくらいならいいか。

 瞬間的に意識を集中させる。一秒がとても長く感じられ、あらゆる物体が遅く見えた。

 命のかかった戦いを繰り返したことで、ゾーンに入るコツを掴んだようだ。

 左手を前に出し、右手を腰の近くに引く。

 可視化された衝撃波が迫る。


 刀剣魔法。


「――――――『流王』!」


 左手で攻撃を受け、身体の中へと衝撃を流す。

 

 細胞一つ一つへと貫通する衝撃を流体のように操作して、方向を変える。


 『剣』の付与で肉体を一振りの剣へと変え、攻撃を受け流し、魔力衝撃波の応用で力の向きを操作し、更に威力を上乗せして反射する大技。

 

 それが、『流王』だ。


「…………ぐはっ」


 自身の魔法を返されたオッサンは壁へと激突し、そのまま気を失った。


「い、今の……あの時に使った……」


「ああ、『流王』って言うんだ」


「…………やっぱりすごいね、玲真は」


「そうか? あんがとな」


 彼女へと手を差し出す。


「約束したからな。ハッピーエンドに変えてやるって」


「うん、信じてた……私のヒーローさん」


「さ、行こうぜ。笑っちまうくらい平和な場所へ」 


「――――――うん!」


 俺達はゲートへと飛び込んだ。

 そして、家へと着いた。


 そして、家族が待っていた。


「兄さん」


「玲真」


「玲真……」


「「「おかえりなさい」」」


「………ただいま」


 ちょっと照れながらそう返すと、みんなが笑った。


 ……俺も、笑った。



次回、最終話。

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