表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダラダラ高校生のVRMMOプレイ録  作者: 乙川せつ
前章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/65

前章最終話 ダラダラ高校生の人生

 玲真目線。




「「「いってきます!」」」


 俺達はそう言って家から出て、学校へと向かう。


「いってらっしゃい」


 フィリアに見送られ、進んでいく。


 いつも通り、日常を歩んでいる。

 当たり前を、過ごしていた。


 あの日、父さんに守られて生き残ったから、今日を生きていられるんだ。

 二か月前、シルヴィアと正面から喧嘩することが出来たから、俺は今幸せなんだ。


 そう思うと、何か込み上げてくるものがある。


 足も止まり、手で空を仰ぐ。

 綺麗な青空が広がっていて、点々と浮かぶ雲が良い味を出していた。


 いつもはあまり好きじゃない青空が今日は何故か、とても好ましく見えたんだ。


 それはきっと、俺が変われたからだと思う。

 俺は俺のまま、成長できた。


「兄さん?」


「玲真?」


 優也とシルヴィアが、足を止めた俺に気づく。

 あの日から俺たちは五人で暮らしている。新たにフィリアとシルヴィアを向かい入れた家はとても賑やかで、楽しいものだ。

 俺は思う。きっとそれが、世界が俺に与えた――――――報酬なのだと。


 アリスに誘われてゲームを始めたのも、ダンジョンで戦ったのも、異世界でフィリアに出会ったのも、シルヴィアと本気で戦い、助けたのも。


 無関係に見えても、世界は何処かで繋がっているのだ。


 俺という、一人の人間の目線で。


 これは魔王を倒す物語でも、世界を救う物語でもない。


 ただ―――――緒方玲真という人間の物語だ。


「……何でもない。さ、急ごうぜ」


 俺は今日も歩いていく。誰かから受け取った今日という明日を。


 

 ◇◇◇


 優也目線。



「……何でもない。さ、急ごうぜ」


 そう言うときの兄さんは、大抵何かある。

 それが過去のことなのか未来のことなのか、そこまでは分からないけど。でも今の兄さんはどこか吹っ切れたように笑っていた。


 そんな兄さんが、一番カッコイイと思う。


 最近の兄さんはいつも悩んでいた。

 笑って気丈に振舞っていても、何処か無理しているように見えた。

 でも今は違う。

 兄さんの苦労はどうやら、実を結んだらしい。


 僕は兄さんにコンプレックスを抱いていた。

 いや、今もあるかもしれない。


 兄さんはいつも、誰とでも仲良くなれた。勉強は僕の方が出来たけど、運動も、優しさも、兄さんに負けていた。

 けど当の本人は自己肯定感が低くて、僕の方を見上げている。

 その二人で起こる矛盾が、嫌いだった。

 だから僕も大切な人を創ろうと思ったんだ。だから、椎名さんが告白してきたのは好都合だった。


 でも、彼女と出会って、少しだけ変われた。

 

 彼女は僕自身を見てくれた。兄さんと比べず、僕だけを。


 それがとても嬉しくて、僕は彼女に惚れていた。


 そして、キッカケになった兄さんに感謝した。


 

 僕はいつも、兄さんに守られ、助けられている。


「……まったく、兄さんはいつもそうだね」


 ◇◇◇


 シルヴィア目線。


 私はあの日、玲真に命を救われた。

 彼とした大喧嘩はとても楽しくて、戦争のことなんて頭から吹き飛んでいた。

 暗殺も、誘拐も、したくない。


 私は、一人の女の子として生きるんだ。

 

 そう思えたのも、玲真に出会えたから。

 彼とスノーホワイトとして関わり続けた数か月。


 私は震えながら、彼と言う名の光を追いかけた。普通の人生に憧れた。星を見上げて、短い旅を歩もうと思った。

 あの世界で、彼とともに旅ができて楽しかった。


 私が絶望で打ちひしがれていても、彼は助けてくれた。

 それが当たり前のように。

 彼は私の手を握ってくれた。


 孤独が終わりを告げる音がした。


 幸せな、温かい音が鳴り響いた。


 彼はきっと、輝く一番星。

 本当なら絶対に届かない場所で一人輝く、一等星。

 でも今は、彼から近づいてきた。


 だから私は今、彼とともに歩めている。それが今の、当たり前。これから先、何があっても。

 私はこの日常を守りたい。


 それが、私の力に宿った意味だから。


 普通の女子高生としての青春を謳歌する。


「玲真、変なの~。まあ時間あるし、ゆっくり行こうよ」


「そうだな、ゆっくり行こう」


「どっちなんだよ兄さん」


「うーんまあ、どっちでも」


 私たちは、この平和な世界で笑えている。



 ◇◇◇


 フィリア目線。



 私は、この世界の人間じゃない。

 でも私はこの世界で生きている。あの日、森の中で玲真と出会って全てが変わった。

 きっと、私の方が彼よりも強い。

 だけど、勝てるビジョンが浮かばない。


 彼は本当の意味で強いんだと思う。

 守るための強さ。


 それが、玲真の強さ。

 

 私は多分、あの日までずっと人形だった。森の中で一人、いつもの動きを実行するだけの肉人形。

 それが、私だった。

 でもあの日、彼と出会ってから世界に色が付いた。


 夕焼けが綺麗だと思えたのはいつぶりだろう。

 星空に心奪われたのはいつ以来だろう。


 人間らしい考えができたのは、久しぶりだった。


「あらフィリアちゃん、三人はもう行っちゃった?」


「お母さま。……はい、ちょうど今」


「そう。見送りありがとね」


 懐かしい。

 種族の違う両親との生活も、幸せだった。

 今は、もっとかもしれない。

 大好きな人と一緒に暮らせるのだから。


「ねえフィリアちゃん、玲真のことどう思ってるの?」


「えっ、ええっ! いきなりどうしたんですか⁉」


 あまりに突然すぎて驚いてしまった。

 顔が熱くなっているのを感じる。きっと、紅葉のように赤いのだろう。


「いやぁ、いつも見てて思うんだけど、玲真ってフィリアちゃんのことを妹みたいに見てるじゃない。

 じゃあ逆はどうなのかなーって」


「………そう、ですか」


 そう、妹。

 玲真は私を死んだ妹と重ねている節がある。私がどれだけ女性らしくしても、彼は何も感じない。

 すこし、ほんの……ほんのすこーしだけ不満だ。

 私は玲真が好きなのに。


 彼は答えてくれない。でも、


「私は、玲真が好きです!」


 たとえ叶わなくても、私は彼のことを愛する。


「………そう」


「大好きなんです!」


 私の答えを聞いてお母さまは安心したような表情を見せた。

 そして同時に、少しだけ瞳を潤わせた。


「多分、これから沢山の強敵ライバルが現れるわ。

 玲真は誰でも助けてしまうような子だから、きっとね。シルヴィアちゃんだってそうよ。それでも、頑張る?」


「――――――……当然! です!」


 それだけは、心の底から断言できた。



 ◇◇◇



 玲真目線2。



 帰宅後、俺は自室でそれを被った。

 フルダイブ用ゲームハード――――――『クロノス』。今思えば、初めてコイツを被ったときから、このストーリーが始まったのではなかろうか。

 

 きっとこれが無ければ、全ては始まらなかった。


「――――――ゲート・オープン」


 意識が元居た世界から断絶され、電脳異世界へと転送される。 

 数秒の浮遊感を感じた後、足に地面が触れた。


「随分と…………久しぶりな気がするな」


 自身の姿を見下ろすと、全身黒一色の装備。

 黒いシャツ、ロングコート、そして――――――黒い剣。

 初期から殆ど変わっていない装備一式。


 愛着もある。


 が、


「……少し恥ずかしいかも」


 と思うようになった。


「……さて、今日は何をしようかな」


「あれ、マオ?」


「…………アリス」


 俺をこの世界に誘った張本人。長い黄金の髪に青い瞳の美少女アバター。別のゲームでも一緒にいた相棒だ。


「久しぶりだね、マオ。元気だった?」


「ああ。中々入れなくて悪かったな」


「ううん、全然。でも……ちょっと寂しかったかな」


「……ごめん」


 忙しかったのもあるが、何故かこの世界を避けるようになっていた。

 自分でも分からなかった……けど、今分かった。


 俺はこの世界が好きなんだ。


 だから、魔法と血に塗れた生活の中でプレイすることを拒んだ。


 きっと、無意識に神聖化していたのだろう。


「でも、戻ってきてくれてよかった」


「アリス……ああ、俺も戻ってきてよかったと思うよ。またお前と一緒に、ゲーム攻略したいしな!」


 俺は殲滅級魔法が使える、ただの高校生だ。


 この世界では剣士で、そして――――――ゲーマー。


「じゃあ、行こうよ。二人で一緒にこの世界を!」


「…………ああ!」



 ◇◇◇






 かつて、ダークネスと呼ばれた剣士がいた。


 多数の女性を侍らせたその男は漆黒のコートを羽織り、二刀の剣を携えていたという。

 その剣技の腕は一級品で、あらゆる達人を屠った。

 その魔法の腕は最強で、あらゆる国に恐れられた。


 そのお人好しな性格は折り紙つきで、あらゆる人を助け続けた。



 ゲームを好み、初めは険悪でも一緒にゲームをして仲を深めたとされる。



「かかってこいよ、勝てるものならなァ」


 

 戦闘中はニヒルな笑みを浮かべ、喜びの声をあげたという。


 二つの世界を統一し、世界最強の王となった彼のことを、かつてのキャラネームにちなんで、人々はこう呼ぶ―――――――――。



 魔すら統べる王、



『魔王』、と。



























最後の最後でかなりの駆け足となってしまいましたが、一応『高校生』としての物語はここで完結です。

現在続編の構想だけはありますが、連載するかは未定です。

こうなってしまった理由としましては、これ以上のストーリーを描くと『ダラダラ高校生』としての物語にはならないからです。

これから起こるのは二つの世界を巻き込んだ大きな戦い。

一応それが完結編にはなるのでしょうが、出し渋っております。そういう思いを込めて、タイトルを『前章最終話』とさせていただきます。


ひとまずの完結をすることができて良かったですが、中々に複雑な気持ちですね。

ここまで読んでくださった皆様へ精一杯の感謝を。

次回があるならまたこの作品で、もしかしたら違う作品かも。そう


それまで、ごきげんよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ