第54話 双魔天
『さぁさぁ大波乱の今大会、第二試合もさっそくいっちゃいましょう‼』
「簡単に言ってくれるねぇ」
「まあまあ」
シルヴィア・グランベルクとの戦いは二回戦。つまり、ここで勝つことが最低条件。
一回戦での負けは、全ての終わり。
『さぁ選手入場! またもや二年生、しかも双子の登場だぁ!』
覚悟満タン準備完了。
さあ、やろうか。
「うっし」
己を鼓舞し、気合いを入れる。
そのまま魔力を一定量放出し、気休めに敵を威圧。
まあ、この程度でビビってくれる相手ではないか。
『緒方玲真、緒方優也コンビ! 対するは我らが生徒会長――――――』
宙に浮くモニターに、その人がいた。
映っている彼女は黒い髪、そして黄色の眼。この学校の頂点に位置する生徒にして、対軍級魔導士でもある生徒会長――――――。
『水崎百合香‼』
「みんなー、応援よろしくねー!」
無邪気な子供のような仕草に多くの男子生徒が悶絶している。
多分、教室でも似たような状況なんだろうな。
「女性を倒すのは気が引けるんだけど……」
「今更引けるような状況でもないだろ。さ、構えろ」
『第二試合――――――開始!』
速攻。術式発現を確認。
体内の魔力回路正常動作。血管を通じて血液の循環正常。
脳を正常に働かせるためには酸素が必要不可欠。魔導士は呼吸を何よりも重要視する。
イメージするための器官は他にないのだから。
「術式・起動」
血管、神経、魔力回路。そして身体を構成する全ての組織。
それらに意識を通し、完全に制御する。
魔法を発動させるためにはコンディションも重要だ。自分が『これだ!』と思う形に近付け、内側から世界を改変していく。
「自分が変わらなければ、か………」
「兄さん?」
「俺、嫌いなんだよ。この言葉」
吐露する想いは、どうでもいいちっぽけな話。
子供みたいな言葉。
「自分を変えられない者に世界を変えるなんて出来ない……ってさ。
でも、それって違うだろ。自分は、自分じゃないか」
「まったく、今が試合中だってこと忘れてない? ……でも、言いたいことはわかるよ」
やっぱり、双子だからな。
見た目は似てなくても、結局想うことは一緒だ。
「変えてしまったら、それは俺じゃ無くなっちまう。俺は俺のまま、世界を変えてやる。――――――これは、その第一歩だ」
『さーさぁ! 水崎選手は氷魔法を使って高速移動している! これは地面を凍らせてその上を滑っているのか⁉』
≫マスター、対象が射程圏内に接近中。残り三百M。
「よぉし、撃ちますか」
「あ、一応僕が先に足を止めとくよ。合図したらでお願い」
「………うす」
「じゃ、行ってくる」
◇◇◇
僕は、僕が嫌いだ。
僕は兄さんのように強くない。強くあれない。
弱い。弱いままだ。
あの時も、妹が殺された時も……僕は動けなかった。
戦えなかった。時が経った今でも後悔が拭えない。
多分これからもずっと、僕は弱いままだ。
――――――でも、兄さんと……母さんだけは、僕が守る。
『おに――ちゃん……わた、し……もう……だめ……だから……おか、さんと……れ、いまお兄ちゃんを……まもって、あげて……おね、がい……わた、しの……最後の、お願い……わがまま……聞いてくれる?』
僕は、あの言葉に応え続ける。
答えて、応えて。
「すいませんね会長……ここからは、封鎖させてもらいます」
「あら、緒方君。向かいに来てくれたのね……あらあら……すっごいギラギラした眼……貴方、そんな顔出来たのね」
兄さんが言っていた。
学校側にもスパイ、もしくは協力者がいるかもしれないって。
生徒側の頂点である彼女は、何かを知っているかもしれない。
情報は、多ければ多いほどいい。
「会長。貴女は、誰の味方ですか?」
「誰……そう。もう知ってるのね―――私達が貴方たち兄弟を売ったこと」
「…………どうしてっ。どうしてだよっ……答えろ、水崎百合香!」
「どうして、ですって? そんなの決まっているでしょう。勝てないからよ」
そんなことだろうとは、思っていた。
「あんな化け物相手に、どう戦えっていうのよ! ……でも、そうね。本心では貴方たちを見捨てたくない。……だけど」
「もういい」
「緒方君……?」
「もういいと言っているんだ。……ガッカリしたよ、貴女は高潔で、正しさを持っている女性だと想っていた―――でも、貴女より椎名さんの方が何倍も清く美しい!」
「…………そう。そうかもしれない……彼女はいつも真面目で、見捨てることが出来ない子だった……だけど、私はそうは成れない。
貴方たちを犠牲にして、この学校を守る!」
どうせ、差し出さなければ学校を破壊するとでも言われたんだろう。
もしくは生徒を殺すとか。
……正直、どうでもいい。
どうしてだろう。口調が荒くなる。
兄さんをトレースしているようだ。でも、僕は僕だ。
「じゃあ、かかってこい――――氷結の魔導士!」
「ええ、いくわよ。双魔の魔導士!」




