第53話 瞬殺
「えー、みんなもう知ってるとは思うが今日からスクール・ウィザード・ウォーが開催される。ウチから出るのは緒方とグランベルクだけだが、応援してやってくれ」
「頑張れよ、玲真!」
「おう」
結局、勝てばいいだけの話だからな。
敵である彼女を見ると、瞳が静かに燃えていた。
ホント、諜報員向いてないぜ?
「二人は競技場に向かってくれ、オレたちは教室で観戦させてもらう」
「分かりました」
「イエッサー」
おいおい、軍隊の癖出ちゃってるよ。普通学校でイエッサーとか言わないからね?
先が思いやられる……って、何で敵の心配をしているんだ俺は。
さてさてさーて、俺達の相手は誰かな?
本校舎から少し離れた競技場。そこにある電光掲示板には既に対戦表が表示されていた。
俺達は一回戦第二試合。なるほど、合計十チームと。
シルヴィアとは……三回戦で当たるな。
「ようやくだね、兄さん」
「ああ、そうだな」
彼女は一回戦。先に情報を集めさせてもらおうじゃないか。
「見るぞ、優也」
「わかってるさ」
『まもなく開会式が始まります。選手の皆さんはコートに集合してください』
試合を行うコートは一キロ×一キロの超巨大広場。
地面は柔らかい土で、強く激突しても傷は最小限に抑えられる。その代わり障害物が無いため、近接に少し分があるかもしれない。
「宣誓!」
生徒会長――――三年の女子生徒で、Sクラス所属の優等生。
確か対軍魔法の使い手だったはずだ。
俺達の対戦相手は……。
「げ」
「あ。生徒会長チーム」
「マジかー」
二回戦の為に温存したかったのだが、これはマズい。非常にマズい。
相手は一人で軍と対抗できる魔導士だぞ。それに対して俺達は加減せざるを得ない魔法の使い手。
優也の魔法も使い勝手がいいとは言えないし、一般魔法で会長に対抗できるのだろうか。
……待てよ。
「あれ使うかぁ」
「え、ホント? グランベルクさんとの戦いまで温存する筈じゃ……」
「最悪奥義さえ残ってればいい。必殺技の一つくらい見せてやってもいいだろ」
「そ、そっか」
長ったらしい宣誓や注意事項が終了し、早速試合の準備が始まった。
教師陣による魔力結界がコート全体を覆い、周囲に及ぼす被害を予防している。
地面を軟化させる土魔導士の準備も整ったようだ。
『それでは、一回戦第一試合。選手入場!』
片方はシルヴィア・グランベルク。
もう片方のチームは男子三人組。普通ならイジメに見えるような光景だが、俺は男子三人が不憫でならない。
『なんと二年のグランベルク選手は一人での参加! 謎の転校生、その実力は如何に⁉
対戦相手のチームはサッカー部の島崎選手、後藤選手、長野選手。三人とも成績優秀な優等生です。一回戦から面白い組み合わせ!』
実況は放送部の二年。顔見知りではあるが、正直今はどうでもいい。
『揃いました。では! 試合開始!』
コートの端と端から始まるため、接敵には少し時間がかかる。
――――――そう、接敵。近くへ寄るなら、だ。
「―――――――――――――――『スターバースト・ブレイカー』」
高精度のマイクがその言葉を拾った瞬間、競技場を閃光が包んだ。
直後爆音が響き渡り、遅れて振動で地面が揺れる。
「……嘘だろ」
「じょ、冗談だよね……」
一キロ。両者一歩も動くことなく勝負が決まった。
シルヴィア・グランベルクの放った魔法は三人の魔導士を吹き飛ばし、コートの外へと押し込んでいた。
その三人には防御魔法を展開する猶予すらなかっただろう。
気が付いたときには光によって打ち倒されていたのだから。
「あれが、国防級魔法……『スターバースト・ブレイカー』……!」
≫解析終了。周囲のあらゆるエネルギーを制御し弾丸に変えて放つ魔法だと推測。
「あれ、正面から対抗できるの……?」
「………出来なくもない、けど……」
「けど?」
「周りを気にする余裕があるかどうか……」
「………そっか。そうだよね……ただでさえコントロールが難しいのに」
これは本当に想像以上だ。
まさかここまでの規模だとは思ってもみなかった。
全力を出すしかないのか?
殲滅級魔法を使うしかないのか……?
『け、決着……あまりにも早すぎる決着です!』
「…………くっそ」
『ここまで短いタイムは初めてでは無いでしょうか⁉ 観戦している選手の顔から血の気が引いています! かく言う私もドン引きです!』
棄権するなら今だぞ。死ぬ可能性があるならやめるべきじゃないのか。
違うだろ。そうじゃないだろ!
「諦めてたまるかよっ……!」
「いこう、兄さん!」
「ド根性ぉ!」




