第52話 狂った真実
「――――――……」
久しぶりにその世界へと降り立った。
足と床が触れ、世界の虚像が再現される。現実世界で色々忙しかったから少し間が開いてしまったが、殆ど変わった様子はない。
「さて、あの人はいるかな」
「えっ、マオって……漆黒の剣士⁉」
「マジかよ本物⁉」
「へっ?」
スポーン地点へと転移してすぐ、謎のプレイヤー達に囲まれてしまった。
装備を見たところ初心者のようだが……というか、ダークネスって何だ?
「あの、ボスソロ攻略のヒーローの⁉」
「そ、ソロ⁉」
尾ひれつきまくってるのか‼
ソロじゃないでしょソロじゃ。先に攻略連合軍が削ってくれてたから勝てたんだから。
流石に一人で全部は無理だって。
いや待てよ……レベルの上がった今ならいけるかも。
「あ、あー……確かに俺がマオだけど、ソロじゃないからね?」
「そ、そうなんですか?」
「仲間がいるし、ボスの攻略だってみんなの協力あってこそだよ……それじゃ!」
「あ!」
全力で逃げる。敏捷特化のパラメータをフルで使い、街中を駆け回った。
……何故だろう、前よりも速い気がする。
「ととっ、あの人を探さなきゃ」
そうだ、この世界に来た理由は攻略のためじゃない。
真実を知るため。
敵を知るためだ。
「俺の予想が正しければ……いや、そうあって欲しくはないな」
「おっ、マオじゃねぇか! 久しぶりだなぁ」
「ガイア!」
相棒であるその男。偉丈夫というかなんというか、頼りがいのある身体は健在のようだ。
「久しぶり。そうだ、お前に聞きたいことがあるんだ」
「なんだ、どうしたよ」
「…………スノーホワイトさんはどこにいる?」
「えっ? ホワイト嬢はホームにいると思うぜ? さっき見かけたからな」
「そっか―――ありがとう」
「おう、またなんかあったら頼れよ」
「ああ」
この世界で一番信頼できる友と別れ、目的地へと到着した。
そこはカルディアから少し離れた場所にある街の一等地。純白の外装が目立つその家の前に立ち、少し考える。
――――――考えろ、今までの状況を整理しろ。理解して、解析して、集約しろ。
一、言葉を知れ。
二、状況を見ろ。
三、統合しろ。
四、更に奥を理解しろ。
「……やっぱ何度考えてもそうなるよな」
結局結論は変わらなかった。
ホームのベルを押し、待っていると――――――。
「はーい。……え、マオさん⁉」
「やぁ、久しぶり。ホワイトさん」
「お久しぶりです! あ、どうぞ中へ」
「ありがと」
今日見極めるしかない。
「…………」
「今日はどうしたんですか?」
「あー……前に言ってたよな、戦いの世界……このニューワールド・ファンタズムと似た世界にいたことがあるって」
「……? はい、それがどうかしたんですか?」
「………………それって、戦場の話かい。シルヴィア・グランベルク」
「――――――……どうして分かったんですか? 緒方玲真さん」
「……はぁ」
……ちっ、嫌な予想が当たっちまった。
「ほぼ勘だよ。……でも、そうだな。アンタと教室で初めて会った時、何故だか親近感を感じたんだ。
今思えば当然だよな、ほぼ毎日一緒に居たんだから」
「……そうですか。やはり私に諜報は向いていませんね」
それは本当にそう思う。
「今思い返してみれば、俺に声をかけたあの時から作戦だったんだな」
あの時、森から帰還しアドバイスを求められたのが彼女との出会い。
その少し前に見かけてはいたが、最初から狙いは接触だったわけだ。
「不自然すぎるよな? いくらゲーム初心者だからって名も知らぬプレイヤーにアドバイスを求めたりするか?
それがVRMMOなら尚更だろ。だが、アンタは俺を狙って声をかけてきた。
現実と仮想世界の両方から俺に接触するのが目的だったんだろ、軍人」
「…………全てお見通しというわけですか」
≫流石マスター、鋭い。
さんきゅ。お前のアドバイスのお陰だけどな。
「言っとくぞ、俺の家族を傷つけてみろ。アメリカがどうなっても知らねぇからな」
「それは脅迫ですか?」
「ああ脅迫だ。だがアンタも似たようなことしただろ、いや。してきただろ」
「…………」
これは俺なりの宣戦布告。
絶対負けねぇ、その決意だ。
「……いいでしょう。貴方がその気なら、真正面から叩き潰します」
「かかってこい、戦争の英雄」




