第51話 血戦前夜
結果、俺達は強くなった。ボコボコにされまくったことで、新たな場所へと辿り着いたんだ。
上を見たことで、自分の中の限界が吹き飛んだ。
「……フシューーーッ……」
《その技》は、所謂奥義。魔術障壁も、レベルの差もブチ壊して炸裂する秘奥。
一撃。
その一撃は、確かに高みへと届いたのだ。
「――――――……ごほっ………いいでしょう。合格です、レイマ」
「しゃアッ‼」
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
俺の腕はボロボロになり、全身疲労が溜まっている。だがフィリアはチートを持っていた。攻撃よりも素晴らしい力を。
「【オーロラ・アリエル】」
魔力のベールが身体を包み、徐々に傷を治していく。
これのお陰で無茶な修行にも耐えられた。
痛みが消え、傷が塞がると、優也が前に立っていた。
「…………やっぱり、兄さんはすごいや」
「そうかっ?」
「そうだよ。僕には、必殺技を作れなかった………足手纏いになるかもね」
「ばーか、そうならないのがお前だろ?」
「…………兄さん………そうだね。ありがとう――――いよいよ明日!」
「ああ」
そう、修行開始から一週間。今日が最終日。
フィリアから出された課題は、「必殺技の開発」。
フィリア曰く『絶対に破られない技を創れば負けることはありません。それに近しい精度の技を開発してください』とのこと。
まったく、無茶ぶりだよな。
だが、お眼鏡には適ったようだ。俺が開発した一撃は認められ、修行を終えた。
命の灯火を見たその先、そこにあった技。
………技というより、心構えといった方がいいかもしれない。負けるもんか、生きて帰る、そういった不屈の心が導き出す一つの答え。
それは愚者の咆哮か、賢者の一矢か。
俺にはまだ分からない。
「レイマ、今の技は多用しないように」
しかし、フィリアには釘を刺された。
この技の危険性は自分でも分かっている。最悪、命の危険があることも。
諸刃の剣であることは承知していた。
「暗闇の中で灯火を見つけるように、勝利へと貪欲な精神。それ自体は素晴らしいものです。ですが、あの「構え」だけは駄目です」
「そっちか」
フィリアが立っている場所を見やると、大地が抉れ、木々が折れていた。
そしてそれが数百m以上届いていることに気付く。見るまでは実感がなかった。たった今自分が生み出した一撃は、恐ろしいものなのだと理解する。
「………分かりますか? この一撃を生み出すために貴方は死の中に生を見つけた――――――つまり、いつ死に引き込まれてもおかしくない状況なんです」
「分かってる。それは最初っから理解できてたさ」
「それなら何故………」
「そうしないと、勝てないからさ」
「それほど、相手は強いのですか?」
強い、か………強いなんてもんじゃないな。
「フィジカルは俺達兄弟より上。それに魔法の制御も完璧ときたもんだ……正直勝率は、十に一つもないだろうさ」
「………この過酷な修行を終えた貴方たちでも?」
「ああ。あちらさんは軍人、こんな道は既に通過してるだろうぜ。それに人を殺すことに躊躇が無いだろ………つまり、こちらは全力を使えずあちらは全力で殺しに来る。不利にも程がある」
「………殺さないんですか?」
「当たり前だろ。俺達はただの高校生なんだ、殺しなんてやりたくもないね」
「そうだね兄さん、僕たちが殺しなんてやったら母さんが悲しんじゃう」
「…………それで、お母さまが奪われたとしても?」
フィリアの言い分も尤もだ。
だが、これだけは。それだけは駄目だ。駄目なんだ……!
「俺達は殺さない。そして勝つ」
「これはプライドや意地の話だよ。意地がない人が勝てる程、この世界は甘くない」
「「勝つしかないんだ」」
「そっくりですね、貴方たち」
「「そう?」」
そうかもな。
俺達は双子だ、見えない絆で繋がっている。それは誰にも斬ることはできない。
これは、絶対だ。そう決まっている。俺が、俺達が決めた。
「…………よっと」
ゲートで家へと帰還した俺達は、それぞれ休息を取ることに。
俺は自分の部屋にあるベッドへとダイブし、束の間の休息を――――――。
『……そうでしょうね』
「…………」
思い浮かんだのは、シルヴィア・グランベルクの言葉。
あれは果たして、どういう意味だったのか?
書類で見たから、ターゲットだから……知っていた?
俺をどこかで見たことがある? 会ったことがある?
「あの眼……どこかで」
直後、最悪の予想が俺の頭をよぎった。
「…………まさか……」
居ても立っても居られなくなった俺は机にある「それ」を手に取り、装着。
「――――――ゲーム・ロード」




