第35話 God has cast the dice.
「いやいやいや……………」
え、俺まったく彼女のこと知らないんだけど。
待てよ、同姓同名の別人かもしれないじゃないか。別に珍しい名前でもないだろ。
………そうだよな?
「私が会いに来たのは、そこにいるレイマ・オガタさんです」
はい、俺でした。
おーい、アンタ誰だよ。俺しらないよ、銀髪の友人なんていないよ。
だからさ男子共。
殺気剥き出しにするのやめてくれない?
モンスターよりモンスターしちゃってるからさ。
俺人間よ?
同族よ?
「あー……悪いんだけどさ、グランベルクさん?」
「はい?」
「俺、アンタのこと知らないんだけど」
「…………そうでしょうね」
「はぁ?」
じゃあ、何で俺の名前知って――――――。
そう言いかけた時、後者にチャイムが鳴り響いた。
「おらー、お前ら座れー」
「やべっ」
「それでは、また後に話しましょう」
何故だろう。美少女に誘われてるのに全然嬉しくない。
全っ然。……ぜんっっっぜんっ!!!!
「起立、気をつけ、礼」
「えー、今日は【軍用魔法】についての授業だ。政岡、軍用魔法の定義は知っているか?」
「はい。軍用魔法は戦闘に特化した魔法で、その一つ一つが国家によって管理されています。政府が戦闘において有用であると判断した魔法の総称が、軍用魔法と呼ばれています」
「ああ、よく授業を聞いているな。それでは、その階級について。緒方、分かるか」
「…………うっす」
一応授業は覚えてるからな、この程度なら分かる。
「軍用魔法は一対一に使用する《対人級》。
小隊から大隊規模に使用する《対軍級》。
艦隊以上の戦力に対抗する《国防級》。
そして攻撃のみに特化し、一発の魔法で大規模国家を壊滅させることができる魔法を《殲滅級》と呼びます」
「よし、お前も大丈夫そうだな」
「………っ」
「…………?」
何か今、グランベルクさんが辛い表情をしていたような。
まるで、自分を嫌うような震え。
「…………」
「どうかしたか、緒方」
「いえっ、何でも」
「そうか? じゃあ次は―――――」
そうして授業は過ぎていき、いつの間にか昼休みになっていた。
さて、ご機嫌な昼食――――――。
「オガタさん、よろしいですか」
……今かよ!
校舎裏へと連れられた俺は、足りない脳を働かせて思考を繰り返していた。
「…………まったくわからん」
「何がです?」
「アンタが俺を知ってる理由も、俺に何かしようとする理由がさ」
「何か、とは」
「……嘘つくの下手だなアンタ。諜報員には向いてねぇよ」
「参りました」
彼女が握っていた右手を開くと、そこには小さな機械が。
見たことはなかったが、聞いたことはある。
「対人魔法具か、これ」
「はい。これには軍用魔法、《ライトニング》がプログラムされています。
これを使って貴方を気絶させ、任務を果たすつもりでした」
「随分と正直に話してくれるな、じゃあついでに聞くけどアンタはどこの国所属の諜報員なんだ?」
「私は諜報員ではありません」
「…………何だって?」
わざわざターゲットのクラスに転校してくる奴が諜報員じゃない?
どういうことだ。
「私はアメリカ軍所属の兵器です」
「アメリカ⁉」
どこの小国かと思ったら世界一位の大国じゃねぇか。
まったく、厄介事に巻き込まれたな。
「…………どうして、と聞くのは野暮か。大方俺の固有魔法狙いなんだろ?」
「そうです。私は貴方を誘致、もしくは本国へと連行する任務を与えられました」
「ったく、まさかこんなことになるとはな」
「奇襲も効かないというのなら、もう手段は一つしかありませんね」
「なんだ、正面から来るっていうのか?」
「そうです。ですが、今ではありません」
今ではない。ということは、まさか……。
「一週間後、《試合》にて貴方を負かします」
……
――――――《ウィザード・ウォー》……!




