第34話 転校生の兵器
俺は未知の物語へと迷い込んだらしい。
自分はきっと、人生はつまらなくダラダラしたものになると考えていた。
それでも、この世界は色んな可能性が溢れているようだ。
「…………」
≫おはようございます。マスター。
「…………ああ、おはよ……Alice」
俺の頭の中に居着いている謎の声、Alice。
彼女? は何かと俺をサポートしてくれる存在だ。ダンジョンの中でも、外でも。
学校の課題にも力を貸してくれるありがたい相棒だ、ゲームの中まで入ってくるのはどうかと思うけど。
今日も今日とて普通の一日がスタートする。
ダンジョンを見つけたからと言っても、俺はただの高校生。
本分というか本業というか、それを忘れてはいけない。
ただ、最近は少し変だ。
登校中―――だけじゃないか、家にいる時以外ずっと視線を感じる。
誰かに見られている、と思ったが俺を見るような暇人なんているのか?
「なぁAlice、俺のこと見てる奴っている?」
≫……はい。姫条沙耶、政岡慎司等の友人を除けば少ないですが、マスターを監視する者が数名確認出来ています。
「マジで? ……誰かの恨みでも買ったかな」
生憎そんな覚えはないのだが。
「おっと、学校学校」
いつも通りの朝食、いつも通りの通学路、いつも通りの学校。いつも通りの友達。
それがどれだけ幸せな事なのか、俺にはまだ分かっていなかった。
「さーてお前ら、喜べ。今日は転校生がやってきたぞ!」
「マジか」
「せんせー。その子女子?」
「ああ女子だ、男子共は狂喜乱舞してもいいからな」
「?」
狂喜乱舞って、いったいどんな人が――――。
「初めまして。アメリカから来ました、シルヴィア・グランベルクです」
時間が止まった。
無論比喩だ、世界は正常に回っている。だがこの教室の人間たちは制止し、外と乖離した時間が流れる。
入って来た生徒は明らかに外人だ、アメリカって言ってたし。
銀髪で、緑色の瞳。長い髪は日本人離れした美しさと男を惑わす色っぽさを含んでいた。
というより、彼女の存在そのものがその……やめとこう。
クラスの男子全員の視線が彼女に集中する。もちろん俺も見ていますよもちろん。
もちろん!
俺だって男の子だ、健全な男子高校生だ!
好きなレートはR――――――18ですよこん畜生!
いや見れないけど。見れないけども!
「……皆さんどうしたのでしょうか?」
「あはは、気にしなくていいぞグランベルク。
まあ日本人の性というやつだ、そっとしておいてやってくれ」
「…………?」
「そうだな席は……あそこに座ってくれ」
「はい」
俺の隣の席……なんてことはなく。
だいぶ離れた場所になってしまった。隣になった男子はガッツポーズを掲げている。隠せよ。
せめて隠せよ。
「なぁ玲真……可愛くね?」
「だな。慎司……声かけてみろよ」
何て他愛のない会話をしつつ、俺達は休み時間を過ごしていく。
予想通りグランベルクさんの元にはクラスメート達が集まり、彼女に対して質問をぶつけていた。
というか、日本語上手いなあの人。
≫…………………………危険。
は?
なんで?
「…………」
「ねぇねぇ、グランベルクさんはどうして日本に?」
「親の都合です」
「日本語上手だね、どこで習ったの?」
「家庭教師がいたんです」
「はいはい! 彼氏いますか⁉」
「………えっと」
あー、やっぱそういう質問出るよね。頑張れ、洗礼みたいなモンだから。
「…いません」
『ぉおおおーーーー』
何がおーだよ、陰キャの心を抉るなよ。(勝手に同族認定しちゃってる)
まったく漫画みたいなことになってきたな。
「ただ………」
『ただ?』
「人と会いに来たんです」
「誰だれ!」
「いったいどんな人⁉」
「まさか男か⁉」
「ウぉー失恋か!」
「――――――レイマ・オガタ……」
『へ?』
へー、オガタレイマね。いかにも普通な名前だな。
どこかダンジョンにでも潜ってそうな名前。
ゲーム好きみたいな……ん?
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――…………………………………………………………俺⁉」
長い思考の末、その結論に至った。




