第33話 帰還と任務
「おっ、元の路地裏だ」
水色のゲートから帰還し、現実世界の地面を踏んだ俺はようやく迷宮が現実だったという感覚に襲われる。
今更だが、夢ではない実感が湧いてきた。
夢だったと言われても納得する出来事だったからな、当然だろう。
「あ、今何時だ…………あれ」
ゲートに入った時から二分も経っていない?
え、白昼夢?
≫ダンジョンの内部では時間の流れが違います。現実の二分があちらの四時間ということも有り得るのです。
「へー、そういうもんか」
もう、そういうものだと割り切るしかないよな。
ありえないありえないと言っても、目の前で見せつけられたら何も言えないよ。
それより現実を受け入れて行動する方が何倍もマシだ。
「俺は強くなった……のか」
自分でも実感できる、筋力が何倍にも向上しているということが。
さっき自分で魔力を使った人体破壊と超速再生の産物だな。
「なあAlice、ブラッドはどこ行った?」
≫ブラッドならマスターの中に入っております。念じるだけで召喚が可能です。
「……念じるだけ――――〝来い〟」
『ぷぎぃ!』
「おー。こりゃ凄い、いったいどういう理屈だ?」
≫マスターと同座標の異相に待機させておき、マスターとのパスから現実へと引き出すのです。
空間跳躍と思っていただければ結構です。
「な、なるほど? ……」
さっぱり分からん。
まあ、取り敢えず召喚魔法だと思っておけばいいか。
「じゃあ、〝戻れ〟」
ブラッドの身体がドロドロに崩れ、地面へと消えていく。
死んでいないか心配になる景色だが、まあダイジョブだろ。
あの迷宮でブラッドだけが仲間になった。
ということは結構な低確率なのだろう。百体中一体と考えるとかなり運がよかったと言える。
思えば何か条件があるのだろうか。
ブラッドだけあまりにもおかしかったからな。いや……考えても無駄か。
「さ、帰るとしますかね」
≫YES、マスター
「…………つか、お前は何なんだよAlice。何で俺の頭の中にいるんだ?」
≫私はマスターの助けとなるように設計された成長知能型プログラムです。
これからは片時も離れることなく、マスターをサポート致します。
「お、おぅ……頼もしいな」
ずっと一緒っていうのは何か変だけど。
「じゃあ、これからよろしくな。Alice」
≫よろこんで。
◇◇◇
私は、人を殺した。
「助けて……たす……ぇて」
友達と同じことを言う人を殺した。沢山、たくさん。
六歳の時、私はアメリカにいた。
そこで生まれ育った。
そして、戦争に巻き込まれた。
相手がどこの国かは知らない、そもそも国なのかも分からない。
テロ組織かもしれないし、反乱なのかもしれない。
「やめ…やめてぇええええええええ――――――っっっ!!!!!!!」
その戦いで、私は私だけの魔法を使った。
《スターバースト・ブレイカー》、それが私だけの魔法。
周囲の運動エネルギーを掌握し、一撃へと変換する魔法兵器。
「君の魔法は素晴らしい! 是非、我が軍でその力を発揮してもらいたい!」
「え……あ、ぁ……」
「君の魔法で何人もの国民が救われる!」
「…………はい」
私は戦争後、アメリカ軍特務士官となり兵士の一員となった。
その後、多くの戦場で人を殺した。
剣でも銃でもない、魔法で。
私は国防級兵器としてアメリカ軍の最終兵器となり、みんなを守るために戦っている。
そう、今も。
だが、三ヶ月に本国から新たな任務が言い渡された。
『至急日本へと渡り、都立魔導教育高等学校へと転入せよ。その後
特別監視対象、緒方玲真を暗殺・もしくは本国へと誘致することを命ずる。』
それが私の任務。
同い年の高校生を殺すか攫う。今までと同じ、暗いお仕事。
今週の火、水、木の投稿は休ませていただきます。




