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ダラダラ高校生のVRMMOプレイ録  作者: 乙川せつ
前章

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第32話 俺だけの何かが欲しい

「くっそ……」


 身体が重い。動かすだけで激痛が奔る。

 いや、生きているだけで鈍痛が響く。


 身体はもう諦めている、もう勝てないと。勝てるはずがないと。


 でも、俺はまだ諦められていない。


 ここで勝てないと家には帰れないんだろう?


 なら、絶対に勝つ。


 絶対、必然、摂理。


 俺は諦めるつもりも、死んで終わるつもりもない。ゲームじゃないんだ、一発勝負になるのは当然だろう?


 ここは唯一無二の世界なんだから。


「……魔力……全解放!」


 魔力回路を一時的に暴走させ身体能力を強化。放出させた魔力を鎧として身に纏う。


 普通ならソッコー死ぬだろうがな、生憎と魔力量だけには自信があるんだよ!


『ほぉ……面白い。魔力の鎧とはな、存外楽しめそうだ』


「ああ、楽しませてやるよ……聖騎士!」


 血管が千切れる。

 

 指が震える。


 神経が擦り切れる。


 魔力回路が弾け飛ぶ。


 視界が霞む。


 意識が薄れる。


 魂が摩耗する。


 俺という存在が消えていく。


 ―――――。


「――――――……ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーッッッ‼」


 ≫生命限界突破。生存可能性臨界到達、突破。これ以上は危険です。


「わーってるよ!」


 そうだ、まだ俺は終われねぇ。

 限界なんぞ超えてやるよ、死ぬ覚悟はもう出来てる――――本当か?


 死ねるのか?


 おい、緒方玲真。


 お前はここで死んでもいいと思っているのか。


 違うだろ、そうじゃないだろ。


「……俺は、生きて帰らなくちゃいけないんだよ……!」


 ああ、死ぬ覚悟じゃない。


 強くなる覚悟だ。


「魔力収束」


 暴走させていた魔力を身体の内に集め、収斂させる。

 もっと、もっと小さく。


 心臓に、魔力を全て――――――。


「【全力解放】……!」


 限界突破。


 魔力を発生させる器官、魔力器官は心臓の真下にある。

 立ち昇る魔力を心臓へと叩き込み、血管に載せて前進へと行き渡らせる。


 魔力回路を輝かせ、その純度と精度を向上。


 肉体の強度を限界まで引き上げる。


 身体を魔力によって傷付け、自然治癒力を向上させ回復。


 その内部の成長を限界まで加速。


 筋肉の急成長、それを意図的に引き起こす。


 あらゆる動作を魔力による指向性で再現。糸人形を応用した強制動作を実行。


「はぁっ……はぁーっ……」


 これを成長魔法と名付けよう、俺以外には使えないだろうがな。


 いや、使おうともしないだろ。


 こんな激痛が起きる魔法は。


「いってぇ……!」


『……素晴らしい。自分に足りないものを理解し、それを補うのではなく新たに装填するとはな。

 それは間違いなく弱者の意志であり、強者の佇まいだ!』


「ハハッ、ありがとな……さぁ、第二ラウンドを始めようぜ」


 魔力剣構築。


「はぁぁああああッ‼」


『ぐぉっ⁉』


「ブラッド!」


『ぷぎぃいいいい!』


『シャァ⁉』


 俺とブラッドの連携攻撃でボスは大きく体勢を崩した。

 畳みかける準備は整った。


 いや、まだか。


 俺には攻撃手段が足りない。


 魔力の剣では限界がある。


 もっと、威力が欲しい。何か強いイメージがあれば……。


「……炎」


『……何を――――』


 俺が呼び出せない、魔力の炎。


 作れない炎。それを作り出す。魔力によって運動エネルギーを増加。


加速アクセル


 それを発散、収束。


空気調整エアリアル


 ≫魔力演算、空間演算を代替します。マスター、私にお任せ下さい。


「へぇ……いいじゃん」


 メチャクチャ役に立つ相棒だぜ、Alice。

 ブラッドも合わせれば俺達、最強だ。


「――――――――――――〝火花スパーク〟」


 俺の手から火花が滝のように噴出する。


「おわわわわ……!」


 やった、ようやく炎魔法が使えるようになったぞ!


 俺には魔法を演算処理する能力が無かった。《あの魔法》に全て埋め尽くされているからだ。そのおかげで《あれ》だけはノータイムの発動が出来るのだが。


「火花……俺の、炎」


『そんな火花で何ができる。焼け石に水であることが分からんのか』


「そうでもないさ」


 確かに、このままボスにぶつけてもダメージにはならないだろう。

 だが、俺はいい方法を思いついた。


「指向性が欲しいな、何か自己暗示の合図でもつくるか」


 ≫指パッチン等はどうでしょうか、マスター


「おっ、それいいな。それでいこう」


『……?』


「〝火花爆散スパーク・ノヴァ〟」


『…――――――ぐおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ⁉』


 グレイコボルト・ダークパラディンは跡形もなく爆散した。

 自身が従えていた大蛇とともに。


「よし、実験成功!」


 人……モンスターもか。

 それらは魔法に対してある程度の耐性を持っている。免疫といった方がいいかもな、その免疫が魔法というウイルスを撃退し改変を防いでいるのだ。


 だが、それも万能ではない。


 あまりにも大きな魔力には耐えられないし、小さすぎる魔法には防御策を構えてはない。


 それを応用したのが、今の〝火花爆散〟だ。


 さっきの小さすぎる魔法である〝火花〟を対象の内部で連鎖的に発動する魔法だ。

 連鎖までを魔法として定義し、Aliceがそれを演算補助。


 俺のアイデアを実現する魔法というワケだ。


『……ぎ?』


「あー、唖然としちゃってるなブラッド。ま仕方ないか」


 ≫私の能力を十全に発揮した魔法と言えるでしょう。流石マスター、私がお伝えしなくとも私の権能を理解しているとは。


「えっ」


 全然、まったく。


 というかそんな権能?


 あったんだそんな能力。


「あー、一応説明してくれるか」


 ≫了解。私の能力は対象の情報を解析する「鑑定」、超高速の演算領域「高速演算」の二つとなっております。


「ほうほう」


 メチャクチャチートじゃねぇか!


 俺、コイツのお陰で強くなってるんだな。


 自分の力で強くなれてないのは何か結構ショック。


 知らないやつからチート貰っても嬉しくない。


 ≫マスターは自信が行った肉体破壊で身体能力が100%ほど増大しております。


……。


「……ほぼ倍じゃん。――――――あ」


 水色のゲートだ。

 これに入ったら帰れるんだよな。


「それでは、きかーーーーん!」

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