第29話 DA★RA★DA★RAの極意
……痛ぇ。
何だこれ、本気でヤバイ予感がする。
……死ぬ。
「……ハッ、いきなり現れたダンジョンで雑魚敵に殺されてしまいました、ってか。
何でこんなことになってるのか本気で意味分かんねぇ」
でも、だからこそ。
「死ぬわけにはいかねぇよなぁ」
ハッキリしたことがある……これは夢じゃないってことだ。
いや、夢だとしても死にたくはない。
俺は別に自殺願望を持っているわけじゃないからな。だが問題は、それを阻む敵がいるってことだ。
「今のところ敵は一匹……死ぬ気で戦えばいけるか……?」
『グゥうう……』
赤猪―――レッドボアの表皮は頑丈だ、全力の蹴りをお見舞いしても傷を負った素振りもない。
なら有効なのは刺突か斬撃の武器属性……って、ゲーム脳で考えるな馬鹿。
「今の俺が使えるのは……魔法」
そうだ、マオにはない武器が俺にはある。
普通、魔法を許可なく使用するのは憲法違反なのだが……緊急事態というかもうそんなこと言ってられない状況というか。
入ってきたゲートが消えてしまったこの状況でできるのは奥に進むこと。
「……術式・起動」
流石に《あの魔法》を使うわけにはいかない。
なら、一般無属性だけで戦うだけだ。
――――――術式命令、魔力により全身を梱包。その後対象に触れた瞬間に炸裂。
――――――術式命令、魔力を右手に集約。引き金の確立を終えた後待機。
「ふぅー……―――っ」
覚悟を決めろ、緒方玲真。
ゲームでどんな不条理にも耐えてきただろ、猪一匹ぐらい倒して見せろ。
己を鼓舞し、拳を構える。
「来いよ、クソ猪……!」
『ぷぎぃーっ!!!!』
いきなり鳴き声変わったな……さっきまでは本気じゃ無かったってか!
「上等……魔力衝撃拳……!」
衝撃波と衝撃拳の違いはただ一つ、衝撃を飛ばすか直接叩き込むか。
単純に魔力を運動エネルギーへと変換する魔法を使う技だが、俺にしか出来ないというワケではない。
というか誰でもできる。
わざわざこんな基礎魔法を必殺技に昇華する物好きは少ないだろうが。
今度こそ猪に攻撃が効き、パンチの衝撃で壁まで吹っ飛んだ。
ところがまだ生きているようだな。
「はーっ、やっぱり頑丈だな。慎司といい勝負出来るぞお前」
動きは単純、常に直進してくる猪突猛進タイプ。
まあ猪だしなというツッコミは置いておいて。
「やっぱ効くのは剣なのかな?」
そう思い、新しい魔法式を走らせる。
魔法発動に必要な手順は以下の通り。
①発動する魔法をイメージする。
②魔法発動の工程をイメージする。(この時に作られる式を魔法式と呼ぶ)
③魔力を魔法式に流し込み、発動する。
現代魔法はこんな感じで発動できる。
もちろんある程度訓練した魔導士でないと簡略化は出来ない。
今から使う魔法も例外ではない。
「術式、起動」
――――――魔力濃度上昇、魔力回転上昇、魔力循環上昇、形状変化。
「《刀剣魔法》」
右腕から生える魔力の剣。
人に使うと危険なため普段使用は控えているのだがこんな非常事態では役に立つ。
「うん、久々に使ったけど良さそうだ」
これの原理を簡単に言うと、魔力で構築したチェーンソーだ。
魔力の濃度を高めて密度というか構造を強化してから放出する魔力を増やし、形状を剣状に変える。
すると回転率が上がった魔力の刃がチェーンソーのように鋭く噴き出るというわけだ。
単純に魔力を放出しただけではこんな芸当は出来ないだろうな、俺も結構練習したし。
一発で真似できる奴がいたら凹むよ?
「よし。……さぁ、もう準備は終わったぞ。さっさと来いよ」
『ブゥぅう……!』
「あれ、もしかしてビビってる?」
《ブレード》に怯えてるというか魔力量を恐れているのだろうか?
確か俺の魔力量はかなり多かった筈だし。
「うーん……まっ、いいか……さっさと逃げな」
『……?』
「逃げろって、ほら」
『……』
「……何だよ」
『……』
「何だって!」
『……』
「………………………………………………え?」
≫レッドボアは仲間にして欲しそうだ。仲間にしますか?
YES/NO――――――条件を満たしているため即刻配下と出来ます。
「……マジかよ」
俺のダラダラ生活は……どこに行ったのでしょうか。
今年も……よろしくおねがいしまぁーーーーーーーーーーすっ!!!!




