第28話 発見
今日の対人戦闘では俺が勝利した。でも、いつも勝てるというわけではない。
あの技以外にも政岡式武術には危険なものが多い。故に油断はできずその強さはSクラスにも迫るだろう。
一対一限定という制約はあるのだが。
「……帰るか」
優也は確か補習してるんだよな……一人で帰ろ。
大変だな進学コースって。家での自由時間が減るなんて俺なら御免だね。
「……ん?」
何だか、変な感覚がする。
誰かに呼ばれているような……こっちに来いと言われているような感じだ。
声は聞こえない。
気配も感じない。
ただ、誰かの言葉が響いてくる。こんなことは初めてだ。
念話の魔法だろうか、確か今日授業に出てきていた……遠くの人に声を届ける魔法だった筈だがこれはどちらかと言えば「思考」に近いな。
考えが直接頭に流し込まれるような――――――。
「こっちか……?」
俺はその言葉に促されるまま、誰もいない路地へと入った。
換気扇の風が舞い、ホコリの匂いが鼻をつく。
近くにラーメン屋があるからかチャーシューの匂いも混じっているな。
だが、それよりも気になったのは、
「……なんだこれ……穴?」
空間に開いていた水色の歪み。
空気どころではない、その場所にある全てが歪んでいるように見える。
ゲームで見るポータルゲートに似ているが、現実にそんなもの……。
「……そういや、転移ゲートの魔法式が今研究されてたっけ」
そうだ、ここは魔法がある世界。
でもこんなものは初めて見る。……また、声がする。聞こえる、頭に響く。
「入れ、って言ってるのか?」
……どう見ても、どう考えても危険だ。
これが予想通りに転移ゲートだとしても、意味不明な場所に飛ばされる可能性だってある。
俺が、俺の身体が《マオ》なら大丈夫だと言い切れるがここは現実、何が起こるかは分からないし死んだら終わりだ。
ゲームのようにコンティニューは不可能。
「……っ」
――――――それでも、行ってみたい!
「面白そうじゃねェか……〝冒険〟を始めてみよう!」
この現実じゃダラダラしっぱなしなんだからな、少しは身体を動かして楽しもうじゃないか。
「ままよ!」
ブゥン、と耳元で鳴った。
……なんだ、この匂い。
岩の……洞窟の香りがする。行ったことないけど、何となくそう思う。
「……嘘だろ」
見覚えのある景色。
あるはずだ、だって―――――昨日も行った場所なのだから。
「《カルディア迷宮》……第一階層……?」
……………………………………ナンデ?
ナンデェ?
何故ェ?
「いやいや、幻覚だろ流石に……ゲームの世界に迷い込むとか、俺いつクロノス被った……?」
クロノスとは精神を電脳世界に転送するために開発されたハードである。
だが、それを被った記憶はない。
「マジで疲れてるのか……変な声も聞こえてたし、こんな夢を見るなんて……」
何度目をこすっても見慣れた場所だ。
洞窟のような道が続く階層迷宮……俺達が何カ月もかけて挑んだあの世界で最も熱い場所……。
「ハハッ、馬鹿げてるよなこんな夢」
ベッドにも入ってねぇだろーが、と自嘲し先に進むことに。
夢が覚めないならこのダンジョンを探索してみるのも一興だろう。……夢だよな?
『ウゥ……ッ』
「……おっ」
やっぱりモンスターが出てきたか。……見たことないぞコイツ。
見た感じ猪っぽいな、雑魚敵か?
≫レッドボア(レベル12)が現れた。戦いますか?
あ、思ったより強そう。
「へー、戦うかは選択させてくれるのか。我が夢ながら有難い設計だな」
普通に考えればモンスターは見境なく襲ってくるモンだと思うが。
「もちろんYESだ」
≫戦闘が開始しました。敵を攻撃して倒してください。
「ま、そりゃそうだよな。戦闘なんだから」
武器は無し、レベルは恐らく一。
ステータスは初期値……ではないな。俺が今までの人生で鍛え上げてきた肉体の性能は据え置きだ。
とはいえ《マオ》のような強さは発揮できない。
「せあっ!」
まあ、楽しまない理由にはならないんだがなぁッ‼
渾身の蹴り。
『ガァ‼』
「……マジ?」
効いてな――――――。
『ブゥウうううう!!!!』
「ぁ――――――」
――――――痛い。
今年最後の投稿です。一年間ありがとうございました!




