第27話 魔法
魔法。
それは魔力によって世界に干渉し自分の思うが儘に世界を改変する技術。
魔法は火、水、土、風、雷、無の六属性に分けられそれぞれの特性がある。
2,026年頃に《始まりの魔法使い》によって伝えられた御業であり、今では多くの人間が魔導士―――正式名称は魔導兵器専門士資格―――を保有し、世界各地の戦場で活躍している。
比較的平和となった現代でも戦争は終わっていない。
紛争、内乱、国家間……世界は一歩たりとも進んではいなかった。
俺達魔導士候補生はこの「魔導高」で兵器となる勉強をしている。
と言っても俺は兵器になるつもりはない。
俺が生まれ持った魔法を使って世界に平和を、とか大それたモンじゃないが手が届く範囲の人達は助けたい。
この時代、それが偽善と呼ばれることは分かっている。
魔法によって多くの人々が死ぬ時代、それが今だ。
でも、生まれた時代が悪かったからって人を助けないなんてことはできない。
生まれた環境を、しない理由にはしたくない。
世界を思うが儘に変える技術が魔法だというのなら、俺がこの世界を変えてみせる。
「今日の授業は一対一の対人戦だ。こちらから成績を基準として相手を選ばせてもらう。
デバイスに送られた要項を確認するように」
昼休み後、俺達のクラスは体育館に集められた。
教師のいうデバイスとは現在の情報機器だ。かつてはスマホと呼ばれていたものだが、多くの進歩によって名前が変わったらしい。
大きさは5㎝程、形状は真円の装置だ。中央にある青いボタンを押せば宙に映像が投影される。
メールボックスにあった要項を選択すると、どうやら対戦相手は慎司のようだ。
政岡慎司。身体強化魔法の使い手で他の五系統全てに適性がある俺の友人。
「よっす玲真、今日は俺が勝つぜ?」
「ハッ、言ってろ」
「政岡、緒方。四番コートに来い」
「しゃ!」
「行くか」
体育館は六つのコートに分けられていた。それぞれが試合で埋まっており決着がつけば交代となる。
俺達は四つ目のコートに入り、端にあるスイッチを入れた。
それにより物理防御のシールドが展開されバトルリングが完成する。
「政岡慎司、緒方玲真。試合開始」
その言葉で俺たちは同時に走り出す。
近接は本来慎司の間合い。だが俺とて近接戦の心得はある。
――――――魔力展開。その後両拳に装填、後接触の瞬間爆裂。
頭の中でイメージを固め魔法を発動する。
この時代の魔法では杖といったいわゆる触媒は基本不要だ。無論大規模な術式を一人で発動させようとするのなら必要になる場合もあるが、十工程までならイメージだけで充分だろう。
「いくぜ……《ウォーリアー》!」
無属性魔法の身体強化。これを使用すれば鍛えていない者でも軍人並みのパワーを発揮する。
使用後に押し寄せる膨大な負荷と引き換えに。
慎司は鍛えているからそれはないのだが。
「うらぁ‼」
俺達は二人とも近接魔導士。殴り合いが本分と言えよう。
まあ、正確には違うんだけど。
「ふっ!」
魔力によって構築した障壁によって衝撃を吸収し、破られても根性で受けきる。
元々腕に魔力を高めていたから、というのはまあ……黙ってろ。
「《魔力衝撃拳》っ……」
「うぉ⁉」
左の拳で放つ魔力の塊。それは慎司の身体を吹き飛ばし、俺達の間を数M拡張した。
再装填してる余裕はあるか?
「強化倍率上昇、セット」
「慎司、お前……本気だな」
「ったりめぇだろ!」
なら、それに答えなくては。
――――――再装填。
左腕にもう一度魔力を流し込み、構える。
それは慎司も同じ。アイツも魔力を両腕……いや、両手に集中させている。
「獅子光撃牙」
魔力集約。やっていることは単純だが、ある程度の身体能力が無ければ身体が壊れるし、意識を集中しなければ魔力が暴走してしまう諸刃の剣でもある。
これを使いこなすことが近接魔導士の初歩とされる基礎技術だ。
「ハァっ……!」
獅子光撃牙、慎司が得意とする技だ。
アイツの家、政岡家は近接の名家といわれており受け継がれたノウハウがある。
この技は上下に構えた手を顎のように見立て、敵を砕くというもの。
俺は何度もこの技に負けていた。だからいつも使われる前に終わらせていたのだが、今回は予想よりタイミングが早い。
「正面から破ってやる、来い慎司!」
打ち破る、それしかない。
「――――――せあっ!」
来た……。
魔力重複装填――――――。
「魔力衝撃波・片双!」
右手で放つ二重の衝撃。魔力を衝突の瞬間にもう一度装填する技。
「マジか……⁉」
両腕の顎を片手で打ち破り、その防御を突破する。
体勢を崩した今。
ここだ。
「魔力衝撃波……!」
「うぉ⁉」
「試合終了。勝者、緒方玲真」
「うっし」
「あー、負けたー!」
ったく、結構本気で撃ち込んだ筈なんだがピンピンしてやがる。
俺は所謂属性魔法を使えない。
六属性のうち、普段使用できるのは無属性魔法のみ。
俺は魔力で間接的に現象を起こすということが絶望的に苦手なのだ。
「……はぁ」




