第22話 オーバーロード
「ギリギリセーフ、って感じかな?」
黒い剣士は、笑いながらそう言った。
誰もが絶望したその瞬間、少女を救ってみせるという喜劇。いや、英雄劇。
彼のロングコートが靡き、時間の流れを感じさせた。
「おいマオっ、お前、速すぎんだろ……!」
「ガイア、お前も少しは敏捷上げろよ。こういう時不便だぞ」
「普通、そんなことはねぇーんだよ!」
遅れて現れたのは赤髪の男。背中に大剣を背負い、全身を覆う鎧は傭兵のようにも見える。
「ま、遅れて悪かったな。ホワイトさん」
「マオさん……」
「取り敢えず、俺達はアレを倒してくる」
◇◇◇
とは言ってもなぁ。
ステータスの差は圧倒的。レベル80の剣士をあいてにするようなもんだ、もっともそんな剣士はいないが。
やれることはやる、それだけだな。
「ガイア、タンクで注意を引けるか?」
「おっしゃ、任せとけ。アタッカーは頼んだ」
「了解」
鼓動が鳴り響く。耳まで届いてうるさい……が、今はそれが心地良い。
焦るな、気を抜くな。
あくまで冷静に、楽しもう。
「いくぞっ‼」
「おうよ!」
先ずは的の攪乱だな、――――――体技スキル【八倒走電】!
レベル30で習得することが出来る【体技】系統のスキル。
使用する武器によらない必殺技だ。
八歩の疾走で電光石火のスピードを発揮することが可能で、視線を攪乱するにはもってこいだ。
そしてこのスキルには一つ特性がある。
それは、【一歩目より二歩、二歩目より三歩】と言った具合で段階的に加速するというもの。
「せあっ!」
徐々に加速する身体に乗せて放つ斬撃は、面白いほど上手く直撃した。
八連撃。
威力補正は期待できないが、これで完全にヘイトが向いてくれたはずだ。
『グォアアアア!!!!』
「ガイア、頼む!」
「うらぁ!」
想定通り突っ込んできたボスの前にガイアが立ち塞がる。丁度俺との間に割り込んだ形だ。
「【リトルブレイカー】!」
大剣同士の衝突。互いの筋力はかけ離れている……無論、ボスが上だ。
だがガイアは一歩も引かない。
それはとある「システム外スキル」によるもの。
確か【スキルロック】とかいうはずだ、うろ覚えだけど。
刀剣系の武具で発生しやすい現象で、スキルの副作用『スキルをキャンセルした時の硬直』を利用した防御――――――しかし必ず発生するわけでもなく、ある程度筋力パラメータが近くなければ起こらない。
以前検証勢が試しているところを見たことがあるが、やはり大剣が一番起こりやすいようだ。
「ナイスだガイア、そのまま頼むぞ!」
「おっしゃ、どーんと来いや!」
あの敗北からずっと、攻略法自体は考えていた。
それをやる勇気がなかった……でも、今は!
「スキル、【八艘飛び】ッ!」
ここはボス部屋、つまり壁と天井がある。だからこそ使える屋内専用スキル、それが八艘飛び。
部屋の中を縦横無尽に飛び回る技だ。
元ネタは牛若丸の伝承だと思う……船が無いとかいろいろ違うところがあるけど。
「ハァあああ!!!!」
片手剣スキル《エクシア》。四連撃はボスの両手両足に炸裂した。
それでもまだ倒れない。当然と言えば当然か、攻略連合軍が全力で戦って倒せていないのだから。
勝率は皆無と言っていい。
だからとは言わないが、俺は今――――――笑えている。
「ハッハーッ! いいぞこれがやりたかったんだァ!!!!」
ああ、もう良い。
全部曝け出そう。もう、周りなんて気にするな。
暴れろ、ここは異世界――――そして、ロールプレイングゲームの中だ!
「――――――!」
俺は黒鉄の片手剣から、鋼の双剣<+4>へと装備を変更。
鍛冶屋で強化してもらったから、性能も数段向上している。これなら、出来るはずだ。
【ヴォーパル・インパクト】
右の刺突。
それはボスの胸部へと突き刺さり、金色のエフェクトを撒き散らした。
それは《クリティカル》の発生エフェクト。
通常、格上に発生することは稀なのだが……。
「ユニークスキル、《ヴォーパル》の効果だ。
このスキル群に当てはまる技は全て、驚異的なクリティカル補正を有する!」
さあ、準備運動はもういいだろう。
ここからは本当の本気。
使えるものは総動員だ、出し惜しみはしない。
――――――これは、ガイアにすら見せたことが無かったな。
「ふーっ……――――――」
〝双剣術〟
『ガァアアッ……⁉』
「――――――――――――――――――〝激烈漸撃〟!」
高速七連撃。
俺流二刀剣術の初お披露目だ!




