第17話 少女の依頼
「ん?」
いつも通りカルディアの広場でクエストを探している時のことだった。
依頼が書かれる掲示板の側に、少女のNPCが立っているのを見つけ、話しかけることに。
「どうしたんだ、何か困ってるのか?」
そう言うと、少女の頭の上に「!」マークが上がり、クエストフラグが発生する。「まあ、そうだよな」と話を聞いてみる。
「剣士様、どうか私の母を助けて貰えませんか?」
「お母さん、病気なのか?」
「はい……しかも、薬には魔酔いの森にしか生えない植物が必要で……お願い出来ませんか?」
「わかった、任せておけ!」
「…………ありがとうございます! 剣士様!」
NPCだと分かっていても、困っている人は見捨てられないよなぁ。
悪い癖だと理解しているつもりなんだが、どうにも治らない。これで事件にでも巻き込まれたら洒落にならないよなぁ。
「そうだ、その植物のことを教えてくれないか?」
「えっと……《ミズシノレンゲ》という花なんですが、それを主食とするモンスターが近くにいると聞いています。
色は紫で、甘い匂いがするそうです…………」
「ミズシノレンゲ………分かった。すぐ見つけてくるよ」
「お願いします! お母さんを助けて下さい!」
「ああ、もちろんだ」
というか、水篠と蓮華って………明らかに日本の名前だよな。
蓮華の花言葉は確か「安らぎ」………そういうところから選んでいるのだろうか。
◇◇◇
「とは言っても、どこから探すか……」
この森には何度も来ているが、それらしき花を見かけたことない。
つまり俺が一度も行っていない場所に生えているということだ。単純に俺が見落としていなければ、だが。
「…………さっきのNPC、本当に人間のようだったな。説明書には『人間らしさを追求した新世代のAI』って書いてあったけど……まあ、確かにAIらしくはなかったな」
魂の再現実験……噂には聞いてたけど、ここまで高いレベルだとは。
このゲームを制作した《リンクス》とは別の企業or研究機関のものだとは思うが、よくもまぁ別企業に渡すなんてことをやったもんだ。
普通なら独占して利権がっぽがっぽとか考えそうなもんだけど。
まあ、ゲームには関係ないか。
「さてさて、通っていないのはこのルートだな」
マップに映っていない道を見つけ、そこに目星を付ける。
この森の中でもかなり暗い場所のようだ。
先がよく見えない。
「暗視スキル持ってないからなぁ……仕方ない、気合いで探すか」
しばらく探し、それらしき群生地を発見。
暗闇の中でも目立つ色をしていてよかった。
「じゃあ持って帰りますかね」
ウィンドウには『4本を回収せよ』と表示されているため、指示通りに回収。
「ついでにもう一本集めとくか、記念に……ん。何の音だ?」
ブンブンと鳴る何か……闇の中で蠢く―――というより、飛ぶ何かがいる。
一瞬見えたそれは、黒く鋭い針。キラリと光るそれは、殺意を見せていた。
「……やっべ、主食にするモンスターがいるって言ってたっけ……蜂、か?」
視線を合わせると、モンスターの種族名が表示される。
《ブラッディ・ソーンワスプ》。
「血の蜂? ソーンは大きさだから……巨大な血の蜂……こっわ……」
『キィいいいいいいいいいいい―――――っ!!!!!!』
「あっぶね⁉」
暗いのも相まって攻撃が見えねぇ!
クソ、もう少し明るければ……そうだ。
「…………っ」
片手剣スキル、ソニックリード。
スキル発生時に起こる発光で周囲を照らす。といっても焼け石に水で、少し見やすいかな程度。
「それで充分……僅かな動きさえ見逃さなければ―――――」
『キィー……』
動くより先に、両断できる。
弧を描く斬撃は蜂の動体と頭蓋を叩き斬った。
「ふぅ……はーっ……」
これで安心……出来ればよかったんだが。
『キィー!』
『キィー!』
『キィー!』
『キィー!』
メチャクチャ大量に湧きやがった。
集合フェロモンでも撒きやがったのか?
いや、殺したら撒くような生態だったのだろうか……いずれにしても、かなりマズい状況だ。
「やるしかないのか……」
腹を括り、二刀流で構える。
突撃しても袋叩きにされるのが目に見えている……なら、迎撃するか。
「来いよ、蜂ども!」
『キィーッ!!!!!!』
…………………………あら、キレてる?
さっきよりも速いし、何か目が紅いよ。
仲間殺されたからだよねー。
やっばいわコレ。数十体はいるし…………………………。
「って、弱音を吐いてる場合じゃねぇ………うらっ‼」
『キィーァ⁉』
『キィぃいいいいいいい!!!!!!』
マジか、殺せば殺すだけ怒るタイプ?
これ時間かけたらマズいよな…………………。
『『『『『『『『キィーッ!!!!!!』』』』』』』』
――――――――――――――――――同時攻撃⁉
「しまった…………これは……………」
躱せない!
そうだ、突破口さえ開ければ…………。
「【ヴォーパル】!」
『キっ………』
「そこぉ!」
一撃で三匹を貫き、道を作る。
……が。
怒号のような叫びを挙げて、一匹が特攻を仕掛けてきた。
避けられない、完全に硬直したタイミングを狙ってきたのだから。
「…………クソ……!」
『キ――――――』
「イヤアアアアア――――ッ!!!!」
その時、一筋の光が舞い降りた。
俺に特攻した蜂を貫き、守ったプレイヤー……。
俺はその人を、知っている。
「――――スノーホワイトさん……⁉」
「間一髪ですね、助太刀します!」
かつて俺がアドバイスした女性プレイヤー。
あの時とは違い、槍を構える彼女の姿が勝利の女神に見えてしまった。




