第13話 剣士
ニューワールド・ファンタズムが正式サービスを開始して、二か月が経過した。
現在は夏休み真っ只中。プレイヤーの数も日々増加しているように思える。
今の俺はというと……。
「せあっ!」
『ガァ……⁉』
ただひたすらダンジョンでレベル上げに勤しんでいた。
しかし、未だにあのボス――――《グレイコボルト・アークナイト》を倒せてはいない。
プレイヤーに換算すれば、ヤツのレベルは八〇。
二か月間必死にレベル上げをしてきた俺でさえ、現状レベル三七で停滞している状況だ。近頃、ボスを倒そうと動いている《連合》が発足されるらしいが、無論俺は不参加。
ガイアとは息がうまく合ってくれたが、集団で戦うことには懐疑的だ。今までのテレビゲームで行ってきたダンジョンとはワケが違う。むしろ、少数精鋭で挑んだ方が有効な気さえする。
「……戻るとするか」
現在俺はカルディア北部のプレイヤーハウスでキャンプを張っている。というか、買った。
しばらくはここにいるつもりだし、どちらにせよ固定の家は欲しかったからな。
帰る家があるというのは、安心感が違う。
「……げっ」
言ってる傍から……。メールリストに入っていたのは一通の招待。連合、《代破連盟》より。
現状最強の攻略組織だが、最下層の教育が届いていない中途半端な強さだ。弱くてもクランの名前を出せば後ろ盾があると言い張れるという、不名誉な称号でもある。
そんな組織からの勧誘だ、当然断っている。先方が言うには『入団しなくてもいいから《連合》で共に戦ってくれ』とのこと。……勘弁してくれ。
他にも《蒼天神界》、《アクア・マリン》、《ソード・オブ・シャリア》等の誘いを蹴っているのに、今更どの面下げて共闘すればいいんだ。
『キシャァ‼』
「⁉」
寸前で躱したが、俺を襲った攻撃が一つ。それは剣でも槍でもない……火球。
――――――《ゴブリン・シャーマン》の群れ。
「マジか……」
正直、ダンジョンで一番会いたくなかったモンスターだ。コイツらは群れで行動し、基本的に全ての個体が《魔法》を習得している。
この世界の魔法というものは殆どの場合、モンスターが習得する《黒魔法》のことを指す。他にもプレイヤーが習得できる《白魔法》というものもあるが、それは《白魔導士》のジョブを保有していなければ習得すらできない。しかもそのジョブは上級であり現状は数人程度。
「対集団戦法その一、連撃速攻!」
ゴブリンの反応速度はモンスター中最低クラス、基本的にそれは揺るがない。しかし奴らも馬鹿なりに学習する――――――。
『キシシャ!』
《火球》、火属性最低位魔法。連射性に優れており、MP消費も少ない。
そう、この魔法は「連射こそ命」という性能をしていて非常に厄介だ。俺的には高火力魔法よりもタチが悪い。
草原ならまだやりようがあったのだが、ここは室内……気合いで避けるしかない。
俺のステータスは未だ紙装甲。数発貰っただけでかなりマズいことになる。
「は、ほっ、よっと!」
『きるるーしゃあしゃしゃうしゃ』
「嘘だろ⁉」
ゴブリン集団の一番奥にいる一回り大きい個体が詠唱を始めた。恐らくあれは《ハイゴブリン・メイジ》。強力な魔法の使い手だ。
「あれが頭領ってことね……なら、頭を潰す!」
腰に備えていたピックを数本取り出し、メイジに投擲した。《投剣スキル》を伴ったその針は赤い軌道を描きながら直進する。
『ぐしゃ!』
狙い通り、ピックはメイジの眼球に突き刺さった。のたうち回る頭領に慌てる配下たち……これがチャンスだな。
「全部貰ってくぜ!」
連携が取れていなければ通常ゴブリンと変わりない。すぐに群れを壊滅させ、剣を背中の鞘へ納めた。
今度こそ周囲を確認し、マイホームへと帰宅する。




