第12話 人間
俺の技は片手剣と二刀流の相互作用で発生する相手の隙をつくスタイル……。
だがそれではダメだった。アイツには――――――ボスには一切通用しなかった!
力がいる。技術がいる。アイツにも……この騎士にも勝てる実力が!
「学ばせてもらうぜ、《スケルトン・ウォーリアー》!」
『…………』
やってみろ、そう言われた気がした。これ以上は、言葉は不要。否、無粋!
敵対モンスターに教えを乞うなど、今までのゲームではありえなかった。だが、ここではその常識は過去のもの――――ここは、今最も熱い幻想世界。
「うらぁっ!」
スキルは出来るだけ使わないように戦う。コレは片手剣に慣れるための一戦だ、それなのにモーションアシストに頼り、決着を焦ることだけはしたくない。
使うならトドメ。最後の必殺技として!
『……』
「フっ!」
軌道を読むのは簡単だが―――一撃一撃が速い! ただの斬撃がそのまま必殺技にまで昇華されている!
(考えろ、頭を回せ! 考えることをやめたらあの時と同じだぞ!)
ボスにトドメを刺されたとき、俺は一撃だけ無意識に反応できた。それでも、ただの偶然。
次の瞬間には真っ二つにされていたし、攻撃を受け止めることも考えられなかった。
「ここで、負けるワケにはいかねェンだよ、骸骨!」
『……』
それは自分も同じ、ってか?
なあ、気付いてるかよ、スケルトン・ウォーリアー。お前……笑ってるぞ。
無論、肉と皮がないため表情を認識することは出来ない。それでも、彼が分かっていることは事実だ。彼という〝人間〟は、今も笑って剣を振るっている。
「はぁあああああ――――――ッ‼」
会心の一撃。騎士の盾を崩した。決める、今!
片手剣剣技、《ストライク・スパイラル》。腕を捻って放つ片手突き――――――。
全体重をのせた突進と、腕の回転を織り交ぜた貫通剣技だ。
「終わりだぁああァ‼」
しかし、それで決着――――――とはならなかった。
「⁉」
『…………』
(盾⁉ 硬い……貫けない!)
騎士の命を支えたのはたった一枚の薄壁。ただしそれは、敵である俺に無限の距離を思わせた。物理的距離と生命を終わらせるための距離は、絶望的なほどに乖離している。
今の一撃で単発スキルに注意が向いてしまった。この一撃で仕留められなかったのは正直予想外だ。
(……連撃は自分で動きを調整できない――――なら、自分の剣だけで!)
「ハァ!」
放ったのは七連撃。
黒鉄の片手剣を空間で舞わせ、一閃一撃を全力で振るう。剣の重さに振り回されそうになるが、根性だけでそれに耐える。
「…………っ」
コイツ、本当に間合いの管理がウメェ!
少しでも大振りになると一歩下がって躱される。しかも次の一手までが早い!
『………………』
「何とか言えよ、骸骨……」
スケルトン・ウォーリアー、お前は強い。ボス程ではないにしろ、今までのモンスターの中では段違いだ。………それでも。
「負けたくないんだよ………!」
何故かって?
さあ?
――――――負けたくないと思うのに、もっともらしい理由なんているのか?
たかがゲーム? ただのゲーム? 金にならないお遊び?
だから何だって言うんだ。俺は、その《たかがゲーム》で手を抜くつもりはない。現実でダラダラ高校生やってんだ、平凡な人生を送ってるんだ…………。
ゲームで、この世界で、本気になってもいいじゃないか!
「決めるぜ、スケルトン・ウォーリアー!」
アニメや漫画に出てくる、主人公のように。
『……』
「お、うらぁ‼」
渾身の力を込めた垂直斬り。それは十字盾に阻まれ、上に浮く。
わざと、黒鉄を手放した。騎士の注意がそちらに向くように。このチャンスを掴むために。
「吹ッ飛べェエ‼」
左脚で思いっ切り踏み込んで放つ、右脚の前蹴り。ただの蹴りは骸骨騎士の胸部に炸裂し、数本の肋骨を粉砕した。
「あばよっ、先生!」
崩れた身体に放った垂直斬りは、吸い込まれるように頭蓋を砕いた。
そしてスケルトン・ウォーリアーは足元からポリゴンとなり消滅していく――――――。
「………あぁ⁉」
しかし俺の眼には、生身の人間が見えていた。幻覚か、それとも幻術か?
進め
人間の騎士は、ただそれだけを呟いた。
「……………………ああ」
とても長く感じたその戦いは、敵からの激励で幕を閉じる。
――――――そして俺は、次の戦いを求めて歩き出す。進み続けるんだ、最後まで。




