第11話 ゲーム
「……戻って来た……この世界に」
昨日ぶりではあるが、何とも不思議だ。まるで数百年が一瞬で過ぎたのかと錯覚するこの感覚。それはカルディアを埋め尽くすほどのプレイヤーの数から感じた!
予想より何倍も多い。それだけを理解し、俺は街を飛び出した。
「ハッ、ハッ……」
仮想世界でも疲れは感じる。といっても、それは脳が思う神経の疲労。
意識さえ保っていれば世界一周だって可能なはず。それを表すかのように、経験値が僅かばかり加算されていた。
(……現状、俺のステータスは敏捷特化のスピードアタッカー。片手剣一本でやるならその強みを活かさなきゃいけない。この世界での強さは、努力の多さ)
それは現実だろうと、仮想世界だろうと揺るがない。
「なら、俺がやることは一つだけ―――――とことんレベルを上げてやる!」
◇◇◇
――――――俺が何故、こんなにも本気になっているのかって?
それは……俺にも分からない。でも、これだけは分かるんだ。……楽しいんだよ、戦いが。
命懸けでもない、この仮初の命を捧げる世界が、どうしようもなく大好きなんだ。
だから、俺は戦う。
この剣を振るう価値がある。金を求めるワケでもない、成績が上がるワケでもない。
俺は、俺という人間を知らせるために、この剣を振るうのだ。
「せあっ」
『ぷぎーっ!』
オークの亜種、《フランクボア》。身軽なステップと全体重をのせたタックルを武器とするモンスター……これが中々に手強い。
「おらよっ!」
武具を着けない蹴り等では大したダメージが入らず、逆にこちらのHPが削られる。
『ぷぎぃーっ‼』
極めつけはこれだ。
タックルを回避しようと宙に飛んでも二本の角が下で待ち構えている。
つまりコレの対抗策は宙に逃げることではなく、側面への退避……もしくは入れ替わるように走り抜けることだ。
「……今っ」
角が俺を打ち上げようとした瞬間に動き出す。時間が止まって見えるような感覚を覚えながら、橙猪の側面を走り抜けた。
『プ……ギャ』
情けない悲鳴を挙げながら猪は消滅し、その命――経験値は俺に入ってくる。
いつも通り敏捷に特化したステ振りを済ませ、また次の獲物を探す。
「……おっ」
それはすぐに見つかった。しかし《ソイツ》は、先程の猪が前菜に思えるほどのオーラを纏っている。――――――《スケルトン・ウォーリアー》。
文字通りの骸骨剣士……いや騎士だろうか。
スケルトンは元人間のアンデット系モンスターだ、生前の装備と戦技をそのまま引き継いでいるというが……。
「アンタ、いったいどんな死線を潜ったんだい?」
『……』
死人に口なし。骸骨剣士は一言も発さない――――――。
「いいぜ、アンタの成仏……。俺に任せな」
『……』
俺の言葉を聞くや否や、その騎士剣は降ってきた。これこそ、俺が求めていた《剣技》。
片手剣での一撃は先程の猪よりも重い、圧倒的な差があるのだ。
――――――〝技術と修練〟の差が。
「アンタは元々修行を積んだ騎士なんだろ? そーいうの、探してたんだよ」
動き自体は単調。だが剣筋が綺麗すぎて、隙が見えない。コレだ、コレなんだ。
(俺の技は片手剣と二刀流の相互作用で発生する相手の隙をつくスタイル……。だがそれではダメだった。アイツには――――――ボスには一切通用しなかった!)
力がいる。技術がいる。アイツにも……この騎士にも勝てる実力が!
「学ばせてもらうぜ、《スケルトン・ウォーリアー》!」




