23わ
シャライムの丘。
ギルドが壊滅して早30年。
人々は瓦礫の隙間に住処を作り、日夜魔人の猛攻に耐え続けていた。
日が沈み、夜になると3〜4つのドラム缶に適当な枝葉を詰め込んで、火の魔術で灯りが灯る。
人々はその灯りを中心に、食べられるものを持ち寄り、煮たり焼いたりしているようだ。
「レア」
「んー?」
レアと呼ばれた赤毛の少女が、火加減を見つめながら気怠そうに返事する。
そんなレアに、湯気の立つマグカップが、ずずいと押しつけられる。
「今日も戦闘、お疲れ様」
マグカップを押しつけてきたヒゲ面の男が、気さくな笑顔を浮かべている。
「…ありがと」
レアはマグカップを受け取り、申し訳なさそうに一口すする。
「大の大人たちが揃いも揃ってお前頼みで、恥ずかしい限りだ」
「別にいいだろ。俺の力と張り合えるやつなんて、いるはずないんだから」
ちゃり、とレアは自分の胸元にあるハニカムを指でいじくる。
「ちから」に振り切ったステータス。
子どもに気遣われて複雑な心境になったか、男は苦笑して、本題を切り出す。
「たまには、向こうでみんなと食わないか」
男の示す方には、大人たちが大きなドラム缶を囲んでいた。
見られていることに気づくと、大人たちが微笑む。
「なんで飯のときまで所定持ちのおっさんどもと過ごさなきゃいけないんだ。ひとりで食うわ」
レアがそう言うと、男は苦笑して引き下がった。
ひとりになったレアの元に、ポンポンと小さなボールが転がってくる。
「あ……」
ボールを追いかけて、小さな子どもがやってきた。
子どもはレアを見上げると、言葉を失って呆然と立ちすくんだ。
「取りな。俺はそれを投げ返せない」
子どもはそれを聞くと、パッと走ってボールを拾って、逃げるように去っていった。
「……」
レアはひとりで、マグカップの中のものを口に注いだ。




