24わ
『魔人が奇襲してきたぞー!』
少女がまだあの子どものように幼かったある日、シャライムの丘に警鐘が鳴らされる。
ひとりの魔人が野営していた人間の集落を発見し、攻撃を仕掛けてきたのだ。
戦えるものは武器を取り、応戦しようとしたが、間に合わなかった。
間に合わず、少女が襲われた。
その赤毛の少女レアは、よく物を壊すことで有名なお転婆な少女だった。
その日の彼女は、腕の千切れたテディベアを引きずるように持っていた。
数秒後。
レアは腕の千切れた魔人を引きずり倒していた。
かつて魔王といわれ恐れられていた存在を、布と綿でできたぬいぐるみを相手にするように引き千切る。
彼女は天恵の『ちから』を持っていた。
強すぎる力ゆえに触れたものは壊れ、子どもの投げたボールでさえ投げ返せない。
ギフト『摩穿鉄硯』。
ほんの少し力を込めただけで、マグカップは持ち手が割れて地面に落ちる。
レアは、魔人からも人間からも恐れられるようになった。
「天恵だよ、レア。君は救世主なんだ」
その中でも、あの男は少女を受け入れていた。また男は、みんなにも認めてほしいと思っていた。
だから何度断られても食事に誘うし、何度マグカップを壊しても新調してくる。
まるで自分の子どものように親しくしてくれた。
「……ありがと」
反骨精神の塊みたいな彼女が素直に礼をいえる、たったひとりの男だった。
……のに、
「……しゅうだ」
パチン、とドラム缶の中の枝が爆ぜて、誰かの叫び声を一度かき消した。
「敵襲だ!」
一瞬だけ呆けてしまったレアは、はたと我に返り、周囲を見渡す。
「あ…」
そこには、短刀を握りしめた少年が駆け込んでいた。




