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第71話 三つに分かれた戦場

第71話 三つに分かれた戦場


――ゴゴゴゴゴゴ……。


食堂の床が。


大きく割れていく。


「実咲!」


ガルドが叫んだ。


「下がれ!」


「分かってる!」


実咲は。


厨房へ走った。


その直後。


床を突き破り。


巨大な黒い腕が飛び出した。


――ドォン!


テーブルが吹き飛ぶ。


「きゃっ!」


実咲は。


横へ転がる。


黒い腕が。


そのまま床を叩いた。


「……大きすぎる」


実咲が。


立ち上がる。


割れた床の奥から。


巨大な身体が。


ゆっくりと姿を現していく。


四本の腕。


黒い鎧。


頭には二本の角。


胸には。


巨大な黒い塊。


地下で見た存在よりも。


さらに大きい。


「……こいつ」


ガルドが。


剣を構える。


「さっきの奴より強い」


巨大な存在が。


ゆっくり顔を上げた。


「――王を返せ」


「断る!」


熊五郎の声が。


地下から響いた。


次の瞬間。


熊五郎が。


階段から飛び出してきた。


左手を。


巨大な存在へ向ける。


「そこをどけ!」


――ゴォォォォッ!


風が。


一直線に走った。


巨大な存在は。


腕を交差させる。


「――っ!」


風に押され。


数メートル後退する。


だが。


倒れない。


「硬いな」


熊五郎が。


呟く。


巨大な存在が。


四本の腕を広げた。


「王よ」


「何だ」


「お前は」


黒い霧が。


四本の腕へ集まる。


「一人で守る」


「……」


「昔と同じだ」


熊五郎の目が。


細くなる。


「違う」


「何が違う」


「今は」


熊五郎が。


後ろを見る。


実咲。


ガルド。


レオン。


そして。


食堂。


「一人じゃない」


その瞬間。


巨大な腕が。


熊五郎へ振り下ろされた。


――ドォン!


熊五郎が。


横へ飛ぶ。


床が。


大きく陥没した。


「熊五郎!」


実咲が。


叫ぶ。


「大丈夫だ!」


熊五郎が。


立ち上がる。


だが。


巨大な存在は。


熊五郎を追わなかった。


その視線が。


実咲へ向く。


「……!」


「実咲!」


熊五郎が。


叫ぶ。


巨大な腕が。


実咲へ向かう。


だが。


実咲は。


逃げなかった。


「こっち!」


実咲が。


厨房へ走る。


「なに?」


ガルドが。


驚く。


実咲は。


厨房の入口まで走ると。


光の壁を。


一部分だけ消した。


「実咲!」


「大丈夫!」


巨大な腕が。


厨房へ突っ込んでくる。


――ドォン!


だが。


実咲は。


ギリギリで横へ飛んだ。


「今!」


光の壁を。


再び展開する。


巨大な腕が。


光の壁に挟まれた。


「――ぐっ!」


巨大な存在が。


腕を引こうとする。


「今度は逃がさない!」


実咲が。


叫ぶ。


だが。


巨大な存在は。


すぐに学習した。


「――なるほど」


腕から。


黒い霧が抜ける。


腕そのものを。


霧に変えた。


そして。


光の壁をすり抜ける。


「えっ!」


実咲が。


驚く。


「そんなこともできるの!?」


巨大な腕が。


背後から迫る。


「実咲!」


レオンが。


飛び込んだ。


「危ない!」


剣を振る。


――ガキン!


黒い腕を。


弾き飛ばす。


だが。


レオンの右腕が。


勝手に動いた。


「――っ!」


剣先が。


実咲へ向く。


「レオン!」


レオンは。


必死に腕を押さえる。


「違う!」


「……!」


「俺じゃない!」


右腕が。


震える。


剣が。


実咲へ向かっていく。


「くっ……!」


レオンは。


左手で右腕を掴む。


「止まれ!」


黒い線が。


首へ向かって。


少し伸びた。


「レオン!」


実咲が。


叫ぶ。


「俺は……!」


レオンが。


歯を食いしばる。


「俺は仲間を斬らない!」


その瞬間。


ガルドが。


レオンの剣を叩き落とした。


「よく耐えた!」


「ガルド……!」


「剣は俺が預かる!」


ガルドが。


剣を拾う。


「お前は別の方法で戦え!」


レオンが。


一瞬。


驚いた。


そして。


頷く。


「分かった!」


レオンは。


周囲を見る。


「なら……」


黒い兵士たちが。


こちらへ迫っている。


レオンは。


床に落ちた椅子を掴んだ。


「これなら!」


「椅子?」


実咲が。


目を丸くする。


「武器がなくても!」


レオンが。


椅子を振り回す。


「戦える!」


――ドン!


黒い兵士の一体が。


倒れる。


「……」


実咲が。


思わず笑う。


「それ、熊五郎が見たら怒るよ」


「なぜ?」


「店の椅子だから」


「……」


レオンが。


椅子を見る。


「……後で直す」


「そこじゃない!」


実咲のツッコミが。


食堂に響いた。


その間にも。


熊五郎と巨大な存在の戦いは。


激しくなっていた。


巨大な腕が。


次々に振り下ろされる。


熊五郎は。


風でかわす。


床が。


次々と砕ける。


「おい!」


熊五郎が。


叫ぶ。


「店を壊すな!」


巨大な存在が。


答える。


「王城も壊れた」


「ここは王城じゃない!」


熊五郎が。


左手を振る。


風が。


巨大な存在の足元をえぐる。


「俺の店だ!」


巨大な存在が。


バランスを崩した。


熊五郎が。


一気に距離を詰める。


だが。


そこで。


熊五郎の右腕が。


動かなかった。


「……っ」


黒い線が。


肩から胸へ。


さらに。


鎖骨へ近づいている。


「まだ……」


熊五郎が。


右腕を見た。


「動かせないか」


巨大な存在が。


その隙を逃さない。


「――王よ!」


拳が。


熊五郎へ迫る。


熊五郎は。


左手だけで。


風を作る。


――ドォン!


拳を。


わずかに逸らした。


だが。


熊五郎の身体も。


大きく吹き飛ぶ。


「熊五郎!」


実咲が。


叫ぶ。


熊五郎は。


床を転がり。


厨房の前で止まった。


「……痛い」


「大丈夫!?」


実咲が。


駆け寄る。


「大丈夫だ」


熊五郎が。


立ち上がる。


その時。


実咲が。


ふと気づいた。


「熊五郎」


「何だ?」


「今の敵」


「?」


「厨房に入ろうとした時」


実咲が。


巨大な存在を見る。


「私の結界を避けた」


「……」


「つまり」


実咲は。


店内を見る。


「この結界を壊せないんじゃなくて」


熊五郎が。


目を細める。


「……避けてる?」


「うん」


実咲が。


頷く。


「なら」


熊五郎が。


周囲を見る。


「使えるな」


「何が?」


「店全部だ」


実咲の目が。


大きくなる。


「……!」


熊五郎が。


笑った。


「実咲」


「うん!」


「お前の結界」


「はい!」


「入口だけじゃなく」


熊五郎が。


店内の柱を見る。


「全部使えるか?」


実咲が。


店内を見回す。


「……できると思う」


「なら」


熊五郎が。


巨大な存在を見る。


「こいつを」


左手を。


ゆっくり上げる。


「店の中で動かす」


実咲が。


理解する。


「追い込むんだね」


「そうだ」


ガルドも。


笑った。


「なるほど」


レオンも。


椅子を持ったまま。


頷く。


「なら」


「……」


「俺たちも動かす」


実咲が。


厨房の入口に立つ。


「みんな!」


「何だ!」


「この店――」


鍋を。


高く掲げる。


「私が守る!」


光の壁が。


一つ。


二つ。


三つ。


店内に。


次々と現れる。


巨大な存在が。


初めて。


後退した。


「――何をする」


熊五郎が。


笑う。


「決まってるだろ」


左手から。


風が巻き起こる。


「店主らしく」


そして。


実咲が。


叫んだ。


「――追い出す!」


食堂の中で。


戦況が。


一気に変わった。

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