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第116話 受け継いだ守護の力

第116話 受け継いだ守護の力


巨大な敵が。


ゆっくりと腕を上げた。


その視線は。


熊五郎ではない。


ガルドでも。


レオンでもない。


実咲だけを見ている。


「お前の中にある」


低い声が響く。


「最後の守護の力を渡せ」


実咲は。


左手を握った。


「嫌」


「ならば奪う」


――ズドォォン!


巨大な黒い腕が。


実咲へ向かって伸びる。


「実咲!」


熊五郎が前へ出る。


炎を放つ。


――ゴォォッ!


しかし。


黒い腕は炎を突き破った。


「くっ!」


熊五郎が。


両手を前に出す。


炎の壁を重ねる。


一枚。


二枚。


三枚。


――ドォン!


――ドォン!


――ドォォン!


三枚の炎の壁が。


次々と破壊される。


「熊五郎!」


「まだだ!」


四枚目。


五枚目。


炎の壁が。


巨大な腕を止める。


だが。


熊五郎の額から。


汗が落ちる。


「……重い」


実咲が。


熊五郎を見る。


「私も!」


「待て!」


実咲が。


光を出そうとする。


だが。


左手が震える。


「……っ」


料理の魔力効果は。


もう切れている。


そのため。


敵の魔力を直接受ければ。


記憶を奪われる危険がある。


「無理に使うな!」


熊五郎が叫ぶ。


「でも!」


「今のお前が力を使えば!」


熊五郎が。


振り返る。


「また記憶を削られる!」


実咲は。


唇を噛んだ。


「じゃあ……私は何もできないの?」


「違う」


熊五郎が答える。


「お前には守る方法がある」


「方法?」


熊五郎が。


鍋を見た。


「料理だ」


「……!」


「料理の効果は切れた」


熊五郎が。


鍋を握る。


「なら、もう一度作ればいい」


ガルドが。


敵を槍で牽制しながら叫ぶ。


「作るって言っても!」


レオンも。


敵の攻撃をかわす。


「この状況で材料はあるのか!」


熊五郎が。


背中の袋を開く。


「ある」


中には。


肉。


野菜。


香草。


そして。


少量の魔力結晶。


実咲が。


目を見開く。


「まだ残ってたの?」


「食堂の主人を甘く見るな」


熊五郎が。


笑った。


「戦場でも食材は持ってる」


「そんなの持ってきてたの!?」


「料理人だからな」


熊五郎は。


すぐに材料を切り始める。


トン。


トン。


トン。


巨大な敵が。


腕を振り下ろす。


――ズドォォン!


ガルドが。


槍で受け止める。


「急げ!」


「分かってる!」


レオンが。


横から斬り込む。


――ザンッ!


「三分!」


熊五郎が。


叫ぶ。


「何が?」


「さっきの料理の効果時間だ!」


ガルドが。


目を見開く。


「また三分しかないのか!」


「だからこそ!」


熊五郎が。


鍋へ材料を入れる。


「三分で十分だ!」


火が。


一気に燃え上がる。


――ゴォォッ!


魔力結晶が。


鍋の中で溶けていく。


肉に。


野菜に。


出汁に。


魔力が染み込む。


香草を最後に入れる。


鍋から。


強い香りが広がった。


レオンが。


思わず振り返る。


「……いい匂いだ」


「食べろ!」


熊五郎が。


器を投げる。


ガルドが受け取る。


レオンも受け取る。


実咲も。


一つ受け取った。


「今度の効果は?」


熊五郎が。


答える。


「さっきより強い」


「どんな効果?」


「魔力の膜」


「また?」


「それだけじゃない」


熊五郎が。


鍋を見ながら言う。


「今回は魔力を一度に放出できる」


実咲が。


聞き返す。


「一度に?」


「そうだ」


熊五郎が。


頷く。


「身体の中に魔力を溜め続けるんじゃない」


「……」


「必要な瞬間に、一気に外へ出す」


ガルドが。


料理を食べる。


――パクッ。


瞬間。


――ドン!


身体の内側から。


魔力が一気に噴き出した。


「うおっ!」


槍が。


強烈な光を纏う。


レオンも食べる。


――パクッ。


剣から。


光が爆発する。


「これは……!」


熊五郎が叫ぶ。


「一撃だけだ!」


「一撃?」


「ああ!」


熊五郎が。


敵を見る。


「その一撃に全部乗せろ!」


実咲も。


料理を食べる。


――パクッ。


温かな魔力が。


身体へ入る。


だが。


今回は。


すぐに左手へ集中した。


金色の膜が。


薄く広がる。


「……!」


実咲が。


驚く。


「私にも?」


熊五郎が。


頷く。


「お前の場合は」


「……」


「一度だけ、守護の力を大きく放出できる」


実咲が。


左手を握る。


「一度だけ……」


巨大な敵が。


笑った。


「無駄だ」


黒い魔力が。


集まり始める。


「その程度の力で」


「……」


「私を止められるものか!」


空から。


巨大な黒い槍が。


無数に降ってくる。


「来るぞ!」


ガルドが。


叫ぶ。


実咲が。


手を上げる。


「私が守る!」


――パァァァッ!


巨大な光の盾が。


戦場を覆う。


黒い槍が。


次々と盾へ突き刺さる。


――ドドドドドドッ!


しかし。


今までとは違う。


盾が。


押し返している。


「すごい……!」


レオンが。


驚く。


実咲の身体から。


魔力が一気に流れ出す。


「これなら!」


実咲が。


歯を食いしばる。


だが。


金色の膜に。


亀裂が入った。


「……!」


熊五郎が。


叫ぶ。


「実咲!」


「大丈夫!」


「無理するな!」


「まだ!」


実咲は。


盾を維持する。


「まだ守れる!」


その時。


ガルドが。


槍を構えた。


「今だ!」


レオンも。


剣を構える。


「行くぞ!」


二人が。


同時に飛び出す。


実咲が。


盾を一瞬だけ開く。


その隙間から。


ガルドとレオンが。


敵へ突っ込む。


――ズガァァン!


ガルドの槍が。


黒い鎧へ突き刺さる。


――ザァァン!


レオンの剣が。


同じ場所を斬り裂く。


黒い鎧に。


巨大な亀裂が入った。


「今だ!」


熊五郎が。


鍋を持ち上げる。


「実咲!」


「分かってる!」


実咲が。


両手を広げる。


守護の光が。


熊五郎へ集中する。


「熊五郎!」


「任せろ!」


熊五郎の炎が。


金色へ変わる。


「これが」


炎が。


巨大な渦になる。


「王と守護者の力だ!」


――ゴォォォォォッ!!


金色の炎が。


敵の胸へ突き刺さる。


――ズガァァァァン!!


巨大な敵が。


後退する。


胸の魔法陣が。


大きく砕けた。


「ぐおおおおおっ!」


しかし。


敵は倒れない。


むしろ。


砕けた魔法陣の奥から。


黒い光が噴き出した。


熊五郎が。


目を見開く。


「……まだ奥にある」


実咲が。


息を切らしながら聞く。


「何が?」


熊五郎が。


敵の胸を見る。


「封印じゃない」


「……」


「もっと大きな魔法陣だ」


巨大な敵の胸の奥に。


新たな紋章が浮かび上がる。


それは。


熊五郎が知っている紋章だった。


「……あれは」


熊五郎の顔から。


血の気が引く。


ガルドが。


聞く。


「何なんだ?」


熊五郎は。


答えない。


実咲が。


熊五郎を見る。


「知ってるの?」


「ああ」


熊五郎が。


静かに答える。


「あれは」


拳を握る。


「俺の王国が滅びる直前に」


「……」


「王城の地下で使われた魔法だ」


実咲が。


息を呑む。


「じゃあ……」


熊五郎が。


敵を見る。


「こいつは」


「……」


「俺の国を滅ぼしただけじゃない」


その瞬間。


巨大な敵の胸から。


大量の黒い魔力が溢れ出した。


「俺の国そのものを」


熊五郎の目が。


鋭くなる。


「利用している」


実咲の左手に。


また黒い線が浮かぶ。


だが。


今度は違った。


黒い線の隣に。


新しい金色の文字が。


ゆっくり浮かび上がる。


――継承


実咲が。


その文字を見つめる。


「継承……?」


熊五郎が。


振り返る。


「実咲」


「うん」


「それは」


熊五郎が。


静かに言った。


「お前の母親が残した力かもしれない」


実咲は。


左手を握った。


そして。


巨大な敵を見据える。


「だったら」


「……」


「私が受け継ぐ」


金色の文字が。


強く輝いた。



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